忘れない味 「食べる」をめぐる27篇
忘れない味 「食べる」をめぐる27篇 / 感想・レビュー
よこたん
“翡翠の胡瓜、瑠璃の茄子。涼味は遠く山間水辺に探ねなくても、食膳方寸の裡にある。” ああ、涼やか。ポリポリ、キュッキュッ、口の中で夏がはじけるようだ。鏑木清方の「胡瓜」の文章がとても美しかった。平松洋子さんが選んだ様々なジャンルの「食べる」が鮮やかな作品達。戦後の食べるに事欠いた時代の食べ物への執着と、必死で保とうとする矜持とのせめぎ合いを描いたものが心に残る。と言いつつも、石垣りんの「鬼の食事」にガツンと頭を張られ、気持ちをすべて持っていかれた。食べるということは、生きながらえるということと再認識する。
2020/07/14
スノーマン
最初の、天井からの蕎麦に心を鷲掴みにされた。朝ドラ『カーネーション』の小林薫演じるお父さんみたいだ(笑)そして町田康のインパクト。日常の些細なこと、と言っては語弊があるかもしれないけれど、麦とろ定食でこんなに葛藤できる才能!『妻がしいたけだった頃』は既読なのにやっぱり面白い、、。『すいかの匂い』は相当前に読んだのでとても新鮮。こんな話だったっけ?怖い!(笑)
2019/07/06
くさてる
エッセイ、詩、小説、短歌と揃った「食べる」を巡るアンソロジー。身近なテーマだけに同じようなアンソロジーも多く、玉石混合になりがちなテーマだけど、これはなかなかの粒揃い。軽く読めるものが多いけれど、その軽さがまた妙味という感じです。良かった。
2020/08/29
ドナルド@灯れ松明の火
平松さんが選んだ食をめぐる小説やエッセイ。なかなか深い作品ばかりで、平松さんのセンスが光る。 お薦め
2019/06/19
nonicchi
近頃評判の「食のアンソロジー」ものの一つかな、と思ってトライしたら一作一作ガツンと来る作品ばかり。読了までに思いのほか時間がかかりました。大げさですが噛み応えのある個性的な皿が並んだ食事を終えたような満足感あり。本書で林芙美子の「風琴と風の街」がやっと読めました。食の思い出はうれしさばかりではなく、悲しさ、くやしさ、侘しさ、懐かしさも運んできますね。はからずも図書館の休館でGW後まで手許におけることになり、そういう意味でも忘れられない一冊となりそうです。
2020/04/07
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