増補改訂 アースダイバー
増補改訂 アースダイバー / 感想・レビュー
kk
土地の来歴やかつてそこで暮らした人々の生き方を手がかりとして、縄文時代以来の土地の記憶が今を生きる我々の暮らしにいろんな形で影響しているというお話。自由な連想と創造的な発想。これは言わば、中沢センセの精神がメタフィジカルなところで遊んでるってな感じもありますから、真面目に読み過ぎてもいけない気がします。読者を選ぶといった類の一冊かと思いますが、kk 的には、いわゆる聖所を取り巻く生者と死者の繋がり、下町ヤンキー文化に関する考察、深川の雰囲気が松尾芭蕉の作風に及ぼした影響などに感心させられました。
2021/09/16
no.ma
東京を洪積台地・沖積低地の地形から読み解く、中沢新一の虚実混交の世界に引きこまれます。アースダイバー地図を見ると、時間の浸食をうけにくい神社や寺院は、かつて水辺に突き出た岬だった場所や半島状の突端部に設けられていることがよく分かります。縄文人は岬のような地形に強い霊性を感じていたという著者の指摘にも頷けます。新宿や渋谷など地形や物語を意識するとまるで別世界になりますね。コロナ明け、あちこち東京散歩する妄想が膨らみました。
2021/02/28
Book Lover Mr.Garakuta
土着の風土史・郷土史の話。歴史研究家や作家さんが執筆にあたり読みそうな本だ。マンガで歴史の勉強をしてからこの本に入るとヨサゲの本である。
2019/07/15
まふ
第4紀の地質上の洪積層と沖積層が縄文から弥生にかけて織りなす東京の現在地の当時を振り返るという不思議な設定。「アースダイビング」がそもそも何ものであるかの定義もなく、高台と低地、そこに住む人々の大まかな歴史を今日の生活に呼び起こす作業が延々と続く。簡単に言えば高地と低地の境には「死」の匂いがまつわりつき、必ず神社があって、そこは猥雑で色街などのエロスの営みが古来行われてきた。低地の海民はざっくばらんでイキでヤンキーだ。ということを縷々述べる。読み物として読めばいいのであろう。
2021/10/10
Eimi
東京の空間と時空を自由に行き来する体験ができた。大学は埋葬地(霊地)を切り開いて作られていることが多い。これは霊地は昔から人の立ち入りをさけてきたアジールであり、生者の権力から自由な空間であるからとある。さらに、知には死者からの視線が大事とある。これは確か中島岳志さんも、倫理的な生き方のためには歴史を学ぶ、すなわち死者の視点を常に忘れないことが重要みたいなことを言ってたな、と思い出して心の深い所で納得した。哲学者ならではの文章が、私の脳内をトランス状態のように変化させ、不思議な読書体験となった。
2020/03/26
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