紙の城 (講談社文庫 ほ 40-9)
紙の城 (講談社文庫 ほ 40-9) / 感想・レビュー
W-G
テレビ業界やマンガ/小説出版業界、色々置き換えてその存在価値を問える題材。描き方次第で、いくらでも新聞社側とIT企業側の善悪の印象操作が出来てしまうところが一番興味深かった。熱い気持ちを持った記者たちが矜持を示した風な展開だが、当たり前のように相手の過去を探りにかかる姿勢は充分ダーティに見えるし、最終的にはIT側の自滅でカタがつくというのも肩透かし。何より、新聞社の役員も同じ穴の狢だと、ありありと想像ついてしまうのがなんだかなぁというところ。落としどころが難しいテーマだなと強く感じた。
2020/02/05
佐島楓
手堅い企業小説。それにとどまらず、「紙のメディアは今後、どうしたら生き残れるか」という大きな命題に真っ向から挑んでいる。うちは新聞は朝刊・夕刊共に紙派。ただこれは、時代の流れに逆らえないだろうとも思っている。今後とも注視していきたいテーマ。
2020/03/01
ミスターテリ―(飛雲)
「ミッドナイトジャーナル』では、自身の体験から新聞記者の取材の本質とはなにかを問いかけ、「紙の城」では新聞の社会的役割、必要性を真っ正面から。IT企業の乗っ取りに対する記者たちの姿、新聞の購買数の減少のなか本当に新聞が必要なのか「一番大事なのは紙とかネットとかというフォーマットの問題ではない。これだけネットの情報が氾濫しても、1次情報を発信しているのは現場に出ている記者で、その記者を未来に存続させるためにも新聞社はどんな形であれ生き残っていかないとー」新聞を愛する作者の心の叫びが熱い想いで描かれている。
2021/02/22
シキモリ
IT企業による新聞社買収が題材。新聞社の問題点や生存戦略、Web媒体との攻防等【読み物】としては興味深く楽しめたが、小説としてはどうだろうか。登場人物は作中を生きるキャラクターというより、元新聞記者である著者なりの見解や展望を述べる代弁者という印象が強い。これ自体は【作家性】で片付く話だが、どこか傀儡的な人物造詣に魅力を感じ難かった。私自身、正にニュースはネットで済ませる類の人間なので、利便性を上回る優位性を紙の新聞に見出すのは中々難しい。レガシーメディアが本格的な岐路に直面していることを実感させられる。
2020/01/28
アオイトリ
なんとも、今風の経済エンターテイメント。時代の寵児、IT起業家がマスコミを買収しようと画策する。ターゲットは東洋新聞社。ジャーナリズムとは?紙媒体の存在意義とは?業界の暗部にも光があたる。組織内の駆け引きに消耗しつつ、新聞を守ろうと奔走する記者たち。実はこのシナリオを書いたのは元社会部記者の権藤だった…後半、記者たちの怒涛の追い込みは痛快!怜悧なマキャベリスト権藤がナイーブな一面を持っていたり、その彼が理想とする報道のあり方が古参の記者に通じたり、お見事。単なるスキャンダルで幕引きしないところが良き。
2024/03/05
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