MMT 現代貨幣理論とは何か (講談社選書メチエ 718)
MMT 現代貨幣理論とは何か (講談社選書メチエ 718) / 感想・レビュー
Sam
何回か挫折したままになっていたが、頑張って完読。ようやく輪郭が掴めた気がする。当初クルーグマンを始め著名な経済学者からキワモノ扱いされ風前の灯かと思いきやいまでも論争は続いているようだ。最も論議を呼んだ「財政的な予算制約はない(いくら財政赤字になっても構わない)」という主張については筆者も完全には合意しないとしつつも一定の政策含意を認めている。元日銀理事・早川英男氏の「MMTの最大の弱点は会計論に終始していて価格(金利)とか均衡といった経済学の基本的な道具立てを欠く点にある」という評価はその通りと思った。
2021/07/27
belalugosi6997
MMTは「JPGなく拡張的財政政策はあり得ない」を前提としている。その反面、主流派経済学では有からの有を信用創造する。特筆すべきは国債発行は富裕層への不労所得を安定的にリスクなしで得ることができるから反対する。目から鱗は「MMTは新自由主義か?JPGにより政府の介入なく、自動安定装置が働くから。」疑問は「JPGは単純労働、誰でもできて簡単な労働。それはAIや機械化にとって変わる労働。」主流派では金利より経済成長率が低ければ財政破綻はあり得ない、いずれ黒字化できる。MMTを学んだはずが主流派経済学を学んだ。
2020/06/14
みのくま
MMTは、赤字国債まみれで暗い未来を予見する事しかできない現代日本に生きるぼく達の救世たり得るのか。それともただの願望なのか。本書を通読すると、個人的にはMMTに説得力を感じる所があった。特に国家は永続的に存続する事がデザインされており、「債務」を全額返す必要がないという発想には胸を打たれた。この事は貨幣論に留まらず、資本主義や国民国家の謎にまでリーチできるパースペクティブを有する重要事だろう。そしてその基底部には一神教的な終末論と深く結びついている。ぼく達は終末を先送りにする事で永遠を享受しているのか。
2021/04/14
OjohmbonX
マクロ経済学者がMMTの位置付けをフラットかつ平易に解説する。「財政規律を無視できる(自国通貨があり過度なインフレになければ)」結論の妥当性には納得できる一方で、EUの構成国について「ユーロから離脱すべき」との主張も本書に見られたが、仮にEUが政治的に一体化すれば解決し得るのか、自国通貨が通用せず米ドル支配の国は米国がMMT的財政政策を取ったらどうなるのか、自国がMMT的政策を取っても他国から財政規律を要求されて無視できるのか等々、国(体系)の外部との関係だとどうなるのだろうという疑問が湧いた。
2023/04/24
Myrmidon
話題のMMTに関する入門書。筆者がMMTに全面的に賛成ではなく、バランスよい解説に見えるが、それを評価する能力は自分にはない。本書によるとMMTの主な特徴は「財政的な予算制約の否定」「金融政策の有効性の否定」「雇用保証プログラム(JGP)の提言」あたり。筆者の言うとおり、JGPよりはBIの方が有効に思える。あと面白いのは、筆者によれば、現在の日本は、主流派経済学の理論から見ても国債をどんどん発行しなければならないとのこと(筆者は慎重に、主流派経済学のあるモデルに基づくと、としているが)。
2022/12/02
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