銀河鉄道の父 (講談社文庫 か 126-2)
銀河鉄道の父 (講談社文庫 か 126-2) / 感想・レビュー
そる
宮沢賢治や作品世界に影響受けた本はたくさんあるけど父政次郎をスポットした本はなかなかない。最初はちょっと過保護に思えた政治郎の行動も親ってこういうもんだよなぁって思った。どんなに素行が悪くてもスネかじりと思えても見守ってるしいざとなれば助けるし。子供が力を発揮できるものを見つけたらうれしいだろな。賢治以外の子たちも特性掴んで進む道を押し付けたりしない。良いお父さんですね。「われながら愛情をがまんできない。不介入に耐えられない。父親になることがこんなに弱い人間になることとは、若い頃には夢にも思わなかった。」
2023/05/19
ろくせい@やまもとかねよし
宮沢政次郎の半生を見事に描写。華々しくない。倫理観も持ち込まない。ただ精一杯の「生」。明治から大正の激変する社会情勢で、家長や夫や親を自覚しながらも一人の人間として紡ぐ後世を尊重した子育てを描く。「サウイフモノニ ワタシハナリタイ」と表す宮沢賢治の本質に触れた。賢治に言わせる。政次郎は「命の恩人であり、保護者であり、教師であり、金主であり、上司であり、抑圧者であり、好敵手であり、貢献者」で、彼への感情は「尊敬とか、感謝とか、好きとか嫌いとか、忠とか孝とか、愛とか、怒りとか、そんなものでは言い表せない」と。
2021/12/26
ショースケ
宮沢賢治 大好きな童話作家。その父の視点から賢治を描く。この本によると子供の頃賢治は自由奔放だったんだなぁ。裕福な質屋の長男として、病気はすれど伸び伸び育ち、本を買うためにとか金の無心を平気でする。私が抱いていた彼とは違うイメージ。結核で死の淵にいる妹トシのために書いた童話を読み聞かせるところは胸が熱くなる。ところで父親だが、この時代これほど子供達に対して懸命になるのは珍しいのだろうか。甘いというか優しい目でいつも包み込んでいる。父政次郎に好感を持たない者はいないと思う。映画化が楽しみだ。
2022/12/14
ちょこまーぶる
読後は柔らかい気持ちに満たされた一冊でした。宮沢賢治の父親の話なんですが、宮沢賢治の事は「雨二モマケズ・・・」ぐらいの知識しかなかったので、改めて知ることが多くて満足した読書でした。父である政次郎が自ら厳格な父親であろうとしながらも、本心は子ども達の夢や希望をどう叶えるか、地域の名士としての家を保持することの葛藤に苦しみながらも子どもの事を優先し、優しく見守る姿に素晴らしい父親像を見た思いがします。そして、宮沢賢治が溢れ出る様々な才能を好きに伸びるよう導いてくれた政次郎さんに感謝したいとも思いました。
2022/05/22
アキ
第158回直木賞受賞作。宮沢賢治の父親・政次郎の目線で、宮沢家の親子の生涯を描いた。同名映画はほぼ原作に忠実に作られていました。父親と息子の関係はいつの時代も難しいものだが、明治から大正の花巻で、商売の才のない賢治が農業大学を卒業後、物書きになってもそれで食べていけない現実はつらいもの。賢治が童話を妹のトシの病床で病んで聞かせるところが本書のひとつのクライマックスである。その桜の家で賢治が学校の先生を辞め自給自足で暮らし始めるのはトシを引き継いで生きる気持ちがあったのだろう。映画ではそのシーンに感涙した。
2023/05/19
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