春、死なん
春、死なん / 感想・レビュー
ミカママ
TLで気になっていた作家さんの作品を、やっと読めた。「老い」それは誰もが通る道。なのに今までその実情に触れた作品は少なかった気がする。それをまだ20代の見目麗しい女性が書いたとは。ちまたではこの作品の焦点は老いの「性」だと言われているけれども、彼女が描きたかったのはむしろ老いの「寂しさ」や「先行きへの不安」ではないか。人間関係、体力や健康、はたまた経済力なんかも削ぎ落とされた世代になったときの自分、せめて慈しむ存在と寄り添っていたい。
2020/11/08
machi☺︎︎゛
セクシー女優さんが書かれた本と知って手に取った一冊。DVDは見た事あるけど本は初めてで、セクシー女優さんというだけでもっと生々しい性の描写があると思っていたけどそんなに分かりやすいものではなく紗倉まなさんの才能に驚かされた。内容は妻に先立たれた70歳男性の性を書いた「春、死なん」と母親の性を書いた「ははばなれ」の2作。
2021/02/25
sayuri
「春、死なん」「ははばなれ」老人の性と母の性を描いた2篇収録。雰囲気的には、女による女のためのR-18文学賞を思わせる様な作品。著者は1993年生まれの若い作家さんだが、老人の性を扱った濃密なテーマを瑞々しいタッチで描いていて惹きつけられる。表題作の主人公は、妻に先立たれ、息子夫婦と二世帯住宅で暮らしている70歳の富雄。コンビニでDVD付きのアダルト雑誌を購入する富雄には、夫だとか父親だとか言う前に、一人の男としての存在を感じる。老いが纏わりつき、死へ近づいているからこそ性に執着する人間の本能を感じた。
2020/03/29
じいじ
著者への身勝手な先入観から、もっとエロくて官能的な色彩の物語を想像していました。これは、とても文学的な小説です。著者の紗倉さんは、19歳でAVデビュー、今まだ27歳の現役人気女優です。〈天は二物を与えず〉と言う言葉があるが、この作者は幼顔な容姿端麗に加えて、文才にも恵まれています。さて、妻を亡くし、独り身の老人の性への欲望を描いた表題作は、彼女の鋭い観察力と描写力が行き届いていて、面白かった。齢80を間近にしての私は「灰になるまで…」の気力だけは持ち続けていきたい、と思った。
2020/09/05
なゆ
実はなんとなくレビューを書きあぐねていた一冊。表題作は高齢者の性を、『ははばなれ』は母親の性を軸に家族のありようが書かれているようだ。おじいさんだって母親だって、その役割とは別に男であり女である、と。そのことは一般論としては理解できても、肉親に対しては考えないようにしてるような。だからかな、読んでても居心地悪い感じがしてしまう。『春、死なん』の妻亡きあと孤独な二世帯住宅暮らしの富雄70歳の、妻の喜美代にあまり寄り添えてない感じとか、『ははばなれ』の帝王切開跡に対する夫と息子の反応とか、冷たさばかり残った。
2020/11/27
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