詩とは何か (講談社現代新書 2641)
詩とは何か (講談社現代新書 2641) / 感想・レビュー
佐島楓
この本を読んで、詩とは何かと明確に論ずることができるひとはおそらくとても少ないと思われる。ただ、絵画や小説など、ほかの芸術との共通項を考えれば、頭で考えて書くというよりより身体的な何かが発露したときに出来上がってきたものが詩なのではないだろうか。そういうもののほうが長くひとびとの心に残る。いろいろと作中で示してくださっていることがらから、それくらいしか私は読み取れなかった。
2021/11/24
杜のカラス
詩そのものは好きだが、この本の描きぶりは、難しい。和歌や俳句は、それなりに感性に訴えかける。詩となると、難しい。外国の詩は、日本語に訳すると、それは日本の詩であてt、原材料が外国というに過ぎない。詩も、石川啄木や萩原朔太郎、いろいろと素晴らしい作家がいる。変にイデオロギー的な詩の作家は、その意図するところが見えすぎるため、感動しない。他人によって見方、感じ方はことなるだおうけど。
2022/01/28
踊る猫
実にたくさん読み、そして考える勤勉な人だという印象を持つ。それはしかし見栄やハッタリではなく、彼自身の内的な必然性ゆえだろう。ここまで多彩な本を読みながらも、語る言葉は(いや、その読書癖ゆえにこそ?)わかりやすい。偶然がもたらす一回性の奇跡に打ち震え、そして常に頭が真っ白になってしまう「非常時」を経験しつつ、それでもなお書き記す。すると、そうして追い詰められて自らの中の自明な言葉やロジックまで真っ白になってしまった境地から思いもよらない何かが浮かび上がる。このインプロヴィゼーションが彼の詩にスリルを与える
2023/08/17
原玉幸子
詩は、決まりや基準から逸脱した感情や感性をそのまま取り出す手法で、絵画で言えば抽象画に似ていると思っています。故に「この詩は○○がいい」と紹介されても戸惑うばかりで、詩は鑑賞より創作の方が精神的には落ち着きます。著者はを外国語を時々引き合いに言語学の観点にも言及し、又創作の動機に就き「絵画や音楽に通じるものがある」と語っていて成程なぁと感心したのですが、残念乍ら、詩の創作者らしく相手に伝えるより自身の発信を大事にする嫌いがあるのか、表現も文章も文体も総じて読み辛く不親切な新書でした。(◎2022年・春)
2022/03/05
Bartleby
詩人・吉増剛造が試作と詩的なものについて語る。あの、か細く、静かな、少し震えを含んだやさしい声が聞こえてくるようだ。そして語りながらも、「外」から聞こえてくる声に耳をそばだてているような目つき。彼の語りはリニアではないのが面白くて、宙に浮かんだ名前や言葉を唐突にひょいとつかんで差し出されたような驚きがある。例えばディキンソン、カフカ、アファナシエフ、ジミヘン、メシアン、吉本隆明、田村隆一、石牟礼道子etc.彼は“雑”という字を好む。雑神、濁声、ノイズ。雑然と何かぎ満ちた空宙から、フランシス・ベイコン…
2022/12/30
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