現象学の理念 (講談社まんが学術文庫 30)
現象学の理念 (講談社まんが学術文庫 30) / 感想・レビュー
ちくわ
実在があるかどうか、そんなことはどうでもいい。世界は自分の目の前の体験の積み重ねでしかない。分かりにくいとされる「現象学の理念」を私でもわかったような気にさせる、ラーメン屋の漫画にしてしまった筆者の手腕は凄いです!(☆4)
2021/09/30
またの名
「あれ……? 店がエポケーされた……?」とか地味に強めのパワーワードが繰り出される、テンポ良い哲学解説漫画。「科学者の方がまともなのでは……哲学者はうざいだけじゃ……」「その通り。哲学者は実にうざい。しかしフッサールの現象学はその形而上学の100倍うざい」といった会話の展開の仕方もプラトン以来哲学書が陥りがちの一方的な教え魔になる傾向を、ギリギリのところで調整して回避。懐疑主義マンとの議論で一コマたっぷり消費して間合いを作る手際とか、哲学漫画化本の中ではかなり洗練された部類に感じる。オチの強引なSFは謎。
2021/07/14
jjm
デカルトが「我思う、故に我あり」をなぜ疑わなかったのか誰しも考えるところだと思うが、内在で認識していること自体は疑い得ないというのもよくわかる。疑っている対象の範囲が異なっているのか、「疑う」という言葉の問題なのかは私には不明。現象学と科学は対立しておらず「実在」へのアプローチが異なっているだけというのはなるほどと思った。この漫画を見て驚いたのは哲学者の監修がないこと。漫画家の須賀原さんは学生時代に哲学を専攻されていて、永井さんの著書の中で自身の作品が批判されていることに対してもブログで反論と本格的。
2020/12/26
gachin
このマンガで解った気になっていいのかは疑問だけど、解りやすかった。構成的内在を実在として錯覚してしまう(超越)ってのは、今時の科学者ならみんな自然と気を付けてそう。内在の普遍を以ってして真理への漸近を確信する態度は、啓蒙思想から脱却できてるけど、学者以外が科学を語る21世紀ではグローバリズム・定型発達者による大衆の反逆の悪影響を蒙りかねないので、20世紀然とした思想だなという印象。
2021/04/17
サンセット
フッサールの用語に馴染みがないので読んでみた。様々な概念(本書で言えば構成的内在?)を使って現象を理解しようとするのは、誰もが日常的にやってると思うけど、概念が先行すると誤った理解をすることがあるのでは、という気付きを得られるのが現象学の良い所だと思う。科学をやりたい人がまず哲学科に行く必要はないとしても、優れた科学者は自分の認識と丁寧に向き合ってるのではないか、という主張は自分もそう思う。例えばリーマンショックが起きたのは、あるいは原発事故が起きたのは、現象をきちんと見ていなかったからではなかったか。
2020/11/26
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