地下鉄に乗って 新装版 (講談社文庫 あ 70-24)
地下鉄に乗って 新装版 (講談社文庫 あ 70-24) / 感想・レビュー
えにくす
★★★★☆地下鉄の階段を上がると、そこは東京五輪直前の1964年。真次は自殺した兄の姿を見つけ、何とか運命を変えようとする。だが更に時間を遡り、終戦直後の新宿へ。そこで出会う運命の人物。恋人のみっちゃんもタイムスリップして、同じ人物に出会う。これは偶然か必然か?なぜ二人は時をかけるのか?過去の人たちは貧しいがエネルギッシュで、懸命に生きる姿に応援したくなる。果たして兄は救えるのか?真次とみっちゃんの、運命や如何に!ラストで明らかになる衝撃の真実と驚くべき結末に、涙が頬を伝う。ノスタルジックな感動の名作。
2021/06/02
まさきち
昭和の懐かしさに溢れた情景と、解けゆく家族との蟠りの先に、まさかこんな結末が待っていようとは驚きでした。最後に辛い境遇で過ごし続けてきたみち子が、少しでもいいから両親に愛されていたことの喜びを感じられてよかった。
2024/09/27
キンモクセイ
成り上がりの父は家族に暴力を振るうDV野郎だった。DVなんて言葉がない時代、母も真次たち兄弟も我慢するしかなかった。縁をきって生活していた真次がある日の地下道を歩いてると違和感が。地上に出るとそこは兄の昭一が死のうとする日だった。夢か幻覚か?まだ間に合うかもしれない。真次が時間旅行のように過去に行くと若き日の父親に出会う。何故あんなに暴君になったのか?真次の不倫相手のみち子まで過去に行く意味は?自殺する前の兄に会えたのに。悲しい運命がそれぞれに待ち受ける。あぁ、彼女の心を思うと悲しいくらい辛く切ないな。
2021/03/17
ぽろん
新装版。20年も前に描かれていたとは驚きました。のっぺい先生に導かれたのか、地下鉄の意思なのか、大嫌いな父親の過去にタイムワープ。亡き兄の死んだ日を皮切りに、戦前戦中戦後を彷徨う。父親の良いところもいっぱい見るのに、やはり仲直りとはいかないのか。みちこの生い立ち、彼女の行動がなんとも切なく、やりきれなかった。
2020/11/14
konoha
浅田さんの文章は力強い。真次は地下鉄に乗り、兄が自死した日、父親の若い頃にタイムスリップする。東京オリンピック、戦後の闇市の描写が印象的。真次が見る風景や街の人と会話した時の違和感でタイムスリップしたことを上手く表現している。自身の迷いや家族との確執を乗り越えるというテーマに合っていた。真次の愛人であるデザイナーのみち子の運命が切ない。地下鉄は昔も今も東京を象徴する存在の一つ。便利だけど不思議で硬質な感じもある地下鉄を題材に選び、成功していると思う。
2024/08/14
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