私たちはどんな世界を生きているか (講談社現代新書 2591)
私たちはどんな世界を生きているか (講談社現代新書 2591) / 感想・レビュー
trazom
西谷先生が、西洋近代化200年と明治150年の歴史の中で、欧州、米国、朝鮮半島、日本を振り返る警世の書。新自由主義への懐疑には全く同感である。「自由の底が抜けている」「公的機関である国家が、私的な経済活動のエージェントになってしまった」「政治の後退と経済の優位」「民営化(privatization)は「私物化」「私権化」と訳すべき」などの言葉に、先生の強い思いを感じる。社会の変質や崩壊を招いた一番の要因は「労働・雇用」だとして、ILOのフィラデルフィア宣言の重要性を指摘されていることに、蒙を啓かれる。
2021/01/05
踊る猫
教科書のような本だ。真面目に書かれていることが美徳で、その分脱線もなければ豊満な贅肉が生み出す旨味もない。ひと口で言えば、今のリベラルの良さとダメなところがこのコンパクトな本の中に詰め込まれている印象を受ける。この語り口は誰に向けたもので、どう届くものだろうか。アメリカを諌め、日本の国粋主義を嘆く「反日」の作法(私は、これは「保守」と言ってもいいと思うが)は読者の拒否反応を呼び起こすものと思う。それに対する工夫が見られないので、結局「面白味のない一冊」と処理されるのではと……この本の意義を買うだけに、辛い
2021/01/15
いーたん
西洋近代化200年、明治150年という時代のスパンで振り返り、自由と政治について考察する。自分の気持ちを素地によるところか、テンポよく読めたところと、スルスル頭に入らなかったところがありました。自由が底抜けしている現代、分断された人間たちが市場の自由の濁流のなかで溺れている、と警鐘を鳴らす。コロナ禍で変化を余儀なくされているいま、決して後戻りできないポイントオブノーリターンであることを自覚し、自由を考え直すべき、という。何年かして振り返った時に後悔しないように。
2021/01/31
おおにし
(読書会課題本)フランス思想研究家による西洋史の流れからみた日本近現代史の解説本。なので一般的な日本史とはちょっと視点が異なるが、私は著者の主張には大いに賛同する。『世界の人びとは「人権」とか「平等」ということを支えにして社会を組んでいくことに、もう疲れて、倦んできているのではないか』(P.70) 日本も御多分に漏れず、安全・安心な社会づくりと称して、デジタル・AI化による新しい身分制社会に進んでいく可能性が大いにあると私も感じる。
2021/10/22
ta_chanko
西洋近代200年・明治150年。フランス革命以来、掲げられてきた「自由・平等」が、どのようにして西洋・日本・非西洋で受け入れられていったのか。まず西洋で、非白人の犠牲の上に成立。しかし、豊かさを担保する犠牲=植民地の獲り合いから2度にわたる世界大戦へ。その間、日本は「脱亜入欧」を目指して天皇のもとに性急に国民国家を作り上げたが、一次大戦後の国際協調と脱帝国主義化に逆行するかたちで軍部の暴走を許し、二次大戦で破綻。戦後、世界は「自由・平等」を人類普遍の原理として国連中心の集団安全保障体制を構築。
2021/01/22
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