風神雷神 (下) (講談社文庫 や 60-7)
風神雷神 (下) (講談社文庫 や 60-7) / 感想・レビュー
W-G
烏丸光広との出会いから、再び絵への想いが加速する宗達。逸話ごとに産み出された作品が紹介される。随所で妻みつの心情も描かれており、宗達の人物背景に厚みを持たせるのかと思えば、そこはあまり成功しておらず、みつの一方通行で終わってしまったように感じた。阿国はともかく、冴がそれほどに宗達の中で大きな存在と表されていることが、やや唐突。そして、加齢の気配を感じさせないまま終盤に進み、光悦や素庵、光広といった同朋が忙しく逝き、風神雷神の誕生となるが、作品の存在感が物語の枠に収まりきらず、はみ出してしまった印象。
2021/05/16
優希
宗達の才能が見染められ、様々な作品を完成させ、禁中の名品を模写するようになります。東西南北の美術を学ぶ結果になり、宗達の美術の腕は相当なものになったことでしょう。そして遂に風神雷神屏風絵が描かれる。史実と虚構を交えながら描かれた、美術で時代を生き抜いた宗達に興味を持ちました。
2023/02/04
つねじろう
その絵師の作品は多く残され大変有名ではあるものの彼自身の事は明らかではない。よって作品にまつわる人物を次々に登場させ帰納法的に絵師の生涯を描く。それは出雲の阿国だったり本阿弥光悦だったり烏丸光広だったりする。彼女彼等も案外ぼやっとしてるのでお話しは作者の自由自在。扇屋のぼんさんが彼等から見出され化学変化的に変貌し変態する様が作品のエピソードとともに淡々と語られる。その冷静な語り口が逆に興奮を呼ぶ憎い仕掛け。一方で武家は当時、血生臭い争いを繰り広げていたという事を考えるとその時代の市井の不思議さも感じた。
2021/06/01
yamatoshiuruhashi
宗達を丹念に描きながら風神雷神図は全く出てこない。それはそれで柳版宗達を堪能しながらいつ表題に行くのだろうと思っていたら終章で触れられる。それも申し訳程度の枚数だが、この部分に到達するための全編だったのだろう。柳が描く宗達は絵画以外はほとんど能無し。それでも一筋の道を辿りつつ角倉素庵、宗仁などの幼馴染に極め付けは本阿弥光悦。そして「ぬえ」とも呼ばれる烏丸広光などに結局インスパイアされて並ぶ者なき絵師の高みに上り詰めるが実力であり称号のなせる技ではない。原田マハ版宗達より人物が描かれていると思った。面白い。
2023/02/07
Nao Funasoko
伊年のちの俵屋宗達の才能を見抜き理解する本阿弥光悦と烏丸光広。2人との絡みを通して、読者の"はやく続きを読み進めたいっ!"欲求に見事に応える文体は軽やかかつ鮮やか。 合間合間でエピソードが挟まれてきた宗達をめぐる三人の女性に風神雷神図屏風を前にそれぞれの解釈を語らせるラストシーンはエンターテインメントとして出来すぎか。(笑) 美味しかったです。ごちそうさま。
2021/03/30
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