スモールワールズ
スモールワールズ / 感想・レビュー
ろくせい@やまもとかねよし
私たちは意識を共有したいと切望している。意識の利己と利他を揺さぶる6つの物語。他人の思考は共有できないと突きつけられた私、卑しくも利己を重んじる「ネオンテトラ」。誤解に絶望する私、姉の利他を慮る利己を知る「魔王の帰還」。私の不注意から歪ませた母、酷い不条理も利己として飲み込ませる「ピクニック」。許せない加害者、いつしか憎しみを利他に変容させる「花うた」。後悔する過去の私、多様な利他を娘から教わる「愛の適量」。不条理だと片付けられない現実で荒廃する私たちの利己でも、その共有が利他を生んでくれる「式日」。
2022/02/14
starbro
第165回直木賞候補作(漸く5/5完読コンプリート)ということで読みました。一穂 ミチ、初読です。市井の人々のスモールワールズを綴った短編集、どの作品も読み応えがありました。遅ればせながら、今年のBEST20候補となりました。オススメは、『魔王の帰還』&『花うた』です。魔王(真央)とシャラポワと私は、同じ身長です(笑) https://smallworlds.kodansha.co.jp/
2021/12/13
kou
面白かった。いろんな人生を垣間見た気持ちになった。1話目の「ネオンテトラ」を読んで心がドンヨリしたが、2話目の「魔王の帰還」で、暗い気持ちが吹っ飛んでいった!真央姉ちゃん最高(笑)。真央姉ちゃんでシリーズ化希望!!
2021/09/22
ヴェネツィア
一穂ミチは初読。6つの短篇から成る作品集。全体としては、フィクションを作りすぎている感が否めないが、そうした中にあって、巻頭の「ネオンテトラ」は最も自然体。これに続く「魔王の帰還」と「ピクニック」はは過剰フィクションの典型だが、読後感は悪くない。「花うた」はダニエル・キースの「アルジャーノンに花束を」を典拠とした一種の本歌取り。主題も自ずと似ている。1篇をとるなら「愛を適量」か。ただし、好みは分かれそうだ。最後の「式日」は、巻頭と呼応させているのだが、内容的にはやや空転気味か。
2024/05/06
さてさて
“それぞれの家族が形成する小さな世界を、外の人間は完全にうかがい知ることはできない”、そんな意味を書名に込めたとおっしゃる一穂ミチさん。この作品には六つの短編それぞれにそれぞれ異なる『家族』のあり様が描かれていました。読みすすめていくうちに登場人物たちの印象が変化していくのを感じるこの作品。どんな人間もそれぞれの『家族』の枠組みからは逃れられないことを感じるこの作品。六つの『家族』それぞれに見る「スモールワールズ」な世界のあり方に、一穂さんが”歪さ”に愛しさを見る感覚がどことなく理解できた作品でした。
2022/11/14
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