百人一首 うたものがたり (講談社現代新書 2612)
百人一首 うたものがたり (講談社現代新書 2612) / 感想・レビュー
アキ
千年もの長きに渡り31文字の歌が今に至るまで詠まれているのは、奇跡的なこと。カルタや学校の暗誦で、若い頃に記憶に留めることは一生の財産になるに違いない。歌人ならではの視点で、音楽であり、実存であり、エロスであるそれぞれの歌の魅力を語る口調が確かだ。撰者である定家が歌を選ぶのに、当然鎌倉幕府との関係も考慮していただろう。天武天皇と額田王を入れず、天智天皇から始め、最後は承久の乱で島流しになった後鳥羽院と順徳院で終えるのも、百人一首自体が王家のもののあわれを感じさせるように思える。正月はやはり百人一首ですね。
2022/01/10
ピロ麻呂
歌人水原紫苑さんによる訳、季節の歌でも恋歌解釈、分かりやすい解説がとても良い✨百人一首の本はたくさん読んだけど、古典の教授や研究家が書く本だとありきたりの訳で、文法や歴史背景の解説がほとんど。エッセイっぽくて、読みやすい百人一首解説本としてオススメです🍀
2021/03/25
ほりん
歌人水原紫苑が、歌の意味、作者の出自、歌の背景となる故事など、簡潔に解説してくれる。筆者の率直な感想があるのも嬉しい。例えば「おそらく道綱母のような生真面目な人には、生きづらい世の中だっただろう。現代に生まれていたら、結婚などしないで、才能をじゅうぶん生かせただろうに、気の毒なことである。」など。筆者は「私にとって歌とはまず音楽であり、実存であり、そしてエロスである。」と言う。百首を、正に生きた人の声として届けてくれる。選者・藤原定家がいかに選出したかの考察も面白い。手元に置いて、折々に読み返したい。
2021/05/21
崩紫サロメ
敬愛する歌人・水原紫苑による百人一首の解説書。一首2ページで作者や背景の解説、関連する歌に言及するオーソドックスな面もあるが、やはり魅力は現代短歌を詠む者、同じ歌人としての共感や反発が素直に綴られている点。そして塚本邦雄や岡井隆といった現代短歌の巨匠、また笹井宏之や大森静佳といった若い世代の歌人の歌を引きだしてくる点。おそらく本書を手に取る人の多くは現代短歌というものに接したことがない人が多いであろう。百人一首を通じた現代短歌入門書という風にも読めて、面白い。
2021/06/06
かふ
表紙の明るそうな少女漫画に騙されてはいけない。かなり情念系の憑依タイプの解説で闇が深いのだ。歌人でもあるしね。百人一首だけではなく、それに纏わる歌や文学(能や歌舞伎も)紹介していて、歌人自ら歌の世界にどっぷり潜入していくタイプ。「個人的には歌は色香、いいかえればエロスが命だと思う」という言葉にあるようにどこまでも歌(言霊)に寄り添っていく作者のあり方は、黄泉(詠み=読み)と死者の世界に繋がる。さらにその読みに於いて選者である藤原定家との三角関係(本妻から横どる愛人のような)。初心者よりは二冊目にどうぞ。
2021/04/29
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