原因において自由な物語
原因において自由な物語 / 感想・レビュー
starbro
五十嵐 律人、3作目です。表紙と前2作が面白かったので、期待して読んだのですが、あまり物語が展開せず、少し残念な作品でした。しかし本書が令和の「げんじ物語」だったとは(驚) https://genji.kodansha.co.jp/
2021/08/26
パトラッシュ
顔面偏差値測定アプリが実在していたら、未成年者に使わせていいのか大論争になるはずだ。そのあたりに一切言及せずアプリ絡みで一高校で起きた事件に集約しているためミステリ小説としてはストレートな展開だが、逆に何を基準に容姿の美醜を判断するのかという重いテーマが事実上欠落してしまった。初期の湊かなえさんならアプリが動機で起こる強烈な殺人劇を描き、ハイテク社会で生きるのに苦しむ十代のドラマに仕上げたろう。他の作品でも感じたが作者は法律問題など書きたい話に集中して周辺描写に無関心なので、小説として痩せてしまっている。
2022/04/07
bunmei
弁護士作家というだけあり、事件の裏に潜む人間模様がきめ細かく描写されている。事実を紡ぎ合わせていく謎解きミステリーとしての面白さを堪能させてくれる。法的な立場から学校をサポートするスクールロイヤーや容姿を点数化するマッチングアプリ故意恋を取り入れる辺りは斬新。意味深な転落場面から始まり、人気女流作家の抱える秘密、その彼氏でスクールロイヤーの転落事故死、そして、1年前に起きていた男子高校生の転落事故。事件結果ではなく、それぞれが抱える黒歴史から、次第に真相が明らかになっていく過程を大切に読み取りたい物語。
2021/08/22
うっちー
お仕事がら、法廷小説を期待します
2021/08/01
utinopoti27
売り出し中の女性作家が抱える重大な秘密。ルックス査定アプリによる差別に苦しむ高校生の自殺騒動。本作は、現実社会と作中作の融合という手法を取り入れた「メタミステリ」となっている。それぞれのシナリオを結びつけるのは、女性作家の恋人である弁護士だが、そこから浮かび上がる更なる謎に、読み手は翻弄されてゆく。本作の底流にあるのは、現代社会が抱える多様な病的構造に疲弊する者たちの悲痛な叫びだ。回りくどい表現や、人物描写の弱さなど、万人受けするとは言い難いものの、読み込むほどに天才肌の凄みを感じる作品と言えそうだ。
2022/01/21
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