草々不一 (講談社文庫 あ 119-9)
草々不一 (講談社文庫 あ 119-9) / 感想・レビュー
KAZOO
時代小説の短編が8作収められています。一つ一つの作品がとても味わいのあるもので長編にでもできるといっても過言ではありません。読んだあとにじんわりとしたk持ちになってきます。大石内蔵助の妻りくの「妻の一分」が特に印象に残りました。
2021/09/04
ふじさん
江戸の武家の心を綴った、泣ける、笑える、心が温まる傑作短編集。好きな作品は以下の3作。「蓬莱」は、旗本の四男坊に思いも寄らない大身の旗本家から婿入りの話があり、婿に入った平九郎に妻から3つの約束をさせられる。最後に明かされるその真実とは。「妻の一分」は、大石内蔵助の妻のりくにとっての忠臣蔵とは?、傍にいた犬を語り部として描いた妻と家族のお話。なかなか読ませる。「草々不一」は、漢字が読めない隠居侍が、亡き妻の手紙を読むために手習い塾に通い始める。最後に知ることになる手紙の内容は、しみじみとした味わいの作品。
2024/05/19
sin
江戸と云う時代に生きた武士とその家族の物語…そういうと重々しいがどれも可笑しみと悲哀に満ちた人間味の物語だ。粉者/武士の世界に嫌気がさして浪人に身をやつしたが、兄の切腹の真相に義憤に駈られた仇討ちも所詮武士の面子、青雲/奉公を果たさんが為の活動も出目は他者に転ぶが、脇役たる主人公達がなおのこと際立つ、蓬莱/しきたりに縛られた武士の世界に意外の恋模様、一汁五菜/まさかの復讐譚、妻の一分/内蔵助の家族の物語、落猿/談合は日本のお家芸、春天/初恋、草々不一/夫は妻の実を知らない。そしてサトエリの微笑ましい解説。
2021/09/29
佐島楓
変幻自在、多種多様な短編集。シリアスからコメディーまでなんでもござれ。江戸時代の泰平の世、戦闘能力を必要とされなくなった武士の悲哀を読み、実際も世知辛かったのだろうなとしみじみと思った。いつものことながら、面白かったです。
2021/10/19
エドワード
大学のゼミで「江戸時代の識字率は世界一だった。」と習ったことがある。武士も町人も子供の頃から手習塾に通う。漢字が読めない隠居の忠左衛門。亡き妻の手紙を読むべく子供に交じって字を学ぶ「草々不一」。「楽しむために、学ぶのか。」驚きの一文がいい。藩の情報交換のための聞番「落猿」、江戸城内の台所事情「一汁五菜」、いずれも武士の暮らしの泣き笑いがすぐそこにある。忠義に孝行。法度に武士道。がんじがらめの江戸時代の武士たち。殊に厄介なのが「士道に悖る」というヤツだ。常に藩と家を背負う彼らを見る温かい眼差しが心に沁みる。
2022/02/26
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