対岸の家事 (講談社文庫 あ 131-3)
対岸の家事 (講談社文庫 あ 131-3) / 感想・レビュー
さてさて
『日本ほど子育てしながら働く環境が未整備の国もない…この国が保育という重労働に対し、低い対価しか与えないからだ』。『専業主婦』を主人公とし『育児』への関わり方の異なる登場人物との対比を通じて、そこに潜在する『家事』という『重労働』の存在に光を当てるこの作品。そこには、朱野さんの『家事』に対する新しい視点が描かれていました。『家事』というものの捉え方が人によって大きく異なることを認識させられるこの作品。日々の生活を回していくことの大変さを改めて思うこの作品。『家事』に対する見方が変わる素晴らしい作品でした。
2024/09/08
machi☺︎︎゛
テーマが身近なものなのでとても入り込みやすく面白かった。ワーキングママと専業主婦の立場での子育てや家事、性別や立場の違う様々な現実に戸惑う姿。家族の為に専業主婦を選んだつもりの詩穂は自分の選択が合っていたのか悩む日々を過ごす。専業主婦を馬鹿にしていた礼子は専業主婦に助けられる。分かっていても置かれた場所で咲くのって難しい。私は今出来ることを精一杯頑張ろうと思った。
2023/04/25
Nat
面白かった。私も主人公と同じで2つのことを同時にできないなと思って、結婚と同時に仕事を辞めて10年間主婦をした。だから詩穂の気持ちに激しく同意できるところが沢山あった。まだ主婦が今より多い時代だったので、ママ友がたくさんいたので孤独感は少なかったが、自分の選択に不安を感じることは多かった。働いている人も主婦も安心して子育てできる環境が整えられるといいなと思う。3歳まで育休とっても仕事に復帰できるとか、主婦でも社会と繋がれるとか。みんなでゆったり子育てを支えられる社会になってほしい。焦らなくていいよと。
2022/08/17
Karl Heintz Schneider
主人公の作ったカレーを食べて彼女はぽつりともらす。「ひとの作ってくれた料理って、なんておいしいんだろう」他人の家の家事なんて、しょせん他人ごと、対岸の家事。だけど、そこに一歩踏み込めば救われる人がいるはず。主人公の専業主婦は一歩を踏み出す決意をする。私の妻もかつては専業主婦だった。その頃は気楽なご身分だって思っていたけれど、こういう本を読むと、それがいかに浅はかだったのかに気づく。「一日でいい、誰かにご飯を作ってもらいたかった。」プロローグの主人公の言葉が胸に深く突き刺さった。
2022/06/07
Kazuko Ohta
訳あって、私は最初から子どもを持つ気がなかった者です。だけど結婚すればしょっちゅう「お子さんは?」と聞かれる。「ほしくないんです」とは言えないから「いいえ」と答えると、同情の目で見られ、可哀想だとすら言われる。結局、既婚でも未婚でも、子どもがいてもいなくても、本作のように誰かから見下される。でも、もしかすると見下すことで生きていられるのかもしれないと思うほど、毎日は大変。みんなできることはちがう。だったら見上げ見下すよりも、お互いを認めて、味方はひとりでも多く。日々の心持ちを教えてもらったように思います。
2023/08/16
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