もう生まれたくない (講談社文庫 な 77-4)
もう生まれたくない (講談社文庫 な 77-4) / 感想・レビュー
のんちゃん
春菜、美里、神子は同じ大学で働く友達。ある有名人の訃報を知った時からの、各々の日常と彼女達と薄く関わる人々の日常を死というものを中心に描いた作品。いつも思うが芥川賞作家さんの作品の感想は難しい。大きな出来事もなく淡々と人々の心象風景が語られて行くからだろうと思う。が、解説の西加奈子氏の言葉にもある様に「気にも留めないこと、気には留まったけれど覚えておく必要のないこと」を描いたこの作品は、ある意味、興味深く面白かった。死ぬという事象を心の裏から観る様な作品だ。うーん、これで伝わりますかね😅
2022/05/24
こうすけ
有名人や身近な人の死を軸にめぐる群像劇。かなり挑戦的なテーマで、痛ましい事故死などがわりとライトなテイストで取り上げられていると、「関係者も読んでるかもしれないのに、この書き方はどうなんだ…?」と思わざるを得ない。が、よく考えれば、XJAPANのTAIJIやエマニュエル夫人の女優だって同じことだ。人の死は、すべて同じ痛ましさのはずなのに、時にそれはただのゴシップとなり、数字となり、また人生を揺るがす出来事となる。物語の底には、311という受け止めきれない死の記憶があり、登場人物や読者の脳裏を常によぎる。
2024/05/13
ちぇけら
人はいつか死ぬ。生きているから死ぬのだ。死んでしまえばもう死なない。ぼくらは生をとおして死を「選ばされて」いるから。そして奇しくも、誰かの死によって歪な距離感で他人と「繋が」れる。生きることは、同意を示されても「わかって」もらえた気になれず、タクシーの運転手に「丁寧に」接するような日々の連続だ。それは「正しい」が「心地よくはない」。誰かが死ぬと、不適切に笑いながらも、その人について語り、悼む場が生まれる。他人の死は「正しく」悼めないけれど、そこに生じるゆるやかな「連帯」の日々は、生きているみたいに温かい。
2022/06/18
NAOAMI
職場から繋がる人々が時折触れるゴシップ、他人の死。死に纏わる事情を思ったり、報に接した自身の反応に考えをめぐらせたり。A大学で働く3人の女性、その配偶者や友人、非常勤講師の周辺、それぞれの視点が淡々と続き、時々交差したり表裏の感情を知れたりという話。全体的に退屈な内容なのに、実名人物の死や出来事がエピソードの都度絡ませられ、同じ訃報に対する別々の反応を俯瞰していくのが妙に可笑しく引き込まれる。所々に配されるアクシデントが効果的なアクセントになりハッとさせられる。客観死を通じて命の存在感に繋がったか?疑問。
2022/02/20
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
ゴシップ、有名人の訃報、身近な人の死。同じ訃報(有名人の)を聞いた人、それぞれ思うこと。悼んでないようで悼んでいたり。何気に長嶋有さんの作品には“死”が出てくるのよね。
2022/11/24
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