その日まで
その日まで / 感想・レビュー
sayuri
2021年11月9日、99歳でご逝去された瀬戸内寂聴さんの最後のエッセイ。波乱万丈な人生を送られた寂聴さん。壮絶な戦争体験、防空壕で母と祖父を亡くした時の気持ちを想像すると言葉を失う。99年の歳月の中で、次々と旅立つ作家仲間、寂聴さんの哀しみが胸に迫って来る。ショーケンや三島由紀夫との交流は興味深くその人脈の広さに改めて驚かされた。エッセイが終わりに近づくに連れ死を意識する文章が目立つ。「充分、いや、十二分に私はこの世を生き通してきた。」の言葉に凛とした強さを感じる。あなたの愛くるしい笑顔が大好きでした。
2022/01/24
彼岸花
久しぶりに寂庵の空気を味わった気分。庵主のいない書斎は寂しいだろうな。寂聴さんのエッセイは、いつも温かいものを心に残していく。晩年はネガティブな発言が多く、百歳という節目を迎える不安や孤独感がひしひしと伝わる。執筆意欲に燃えながら体力が伴わず、歯がゆかったと思う。過去の文豪との交流の中で、特に三島由紀夫との話が印象深い。時代の証言者としても貴重な方だった。戦禍で亡くなった母も夢見ていた小説家を全うし、彼女が志した無償の愛を実践し尽くした。「その日まで」は誰にもわからないが、寂聴さんのように精一杯生きよう。
2022/04/10
ゆずぽん
波乱万丈と言われる人生を生ききった寂聴さんのラストエッセイ。円地文子・田辺聖子・江藤淳・ショーケン・三島由紀夫・川端康成(まだまだたくさんの方が登場します)などなど、人脈の凄さに改めて驚いた。寂聴さんは尼僧として、たくさんの友人を見送って旅立たれた。寂しさはひとしおですが、笑って見送られるのを望んでおられるに違いないと勝手に思う読後です。ご冥福をお祈りいたします。
2022/02/10
leono
99歳で亡くなった瀬戸内寂聴さんのラストエッセイ。知人が先に亡くなり寂しそうにその方との思い出を綴っている。そして自分の過去や家族についての今の思いも語られている。 「結局、人は、人を愛するために、愛されるために、この世に送りだされたのだと最期に信じる」という一節が強く心に残る。寂聴さんの素敵な笑顔が思い浮かびます。
2022/03/11
春はあけぼの
冒頭に流政之氏の訃報が届いたと始まるエッセイは、次々と世を去る石牟礼道子さん、田辺聖子さん、河野多恵子さん等々交流のあった逸話や人となりを綴り、寂しさを言及する。 恋に翻弄されながら自分の力で生きてきた寂聴さん。 99年生きてきた一通りの苦労は大したことではないと。心の中に無限に湧き続ける苦痛が究極なのではないか、 生きた喜びとは、愛の記憶だけかもしれないと。来世はもうこの世ではなく、全く別な未知の気球に生まれることを夢見ている寂聴さん。 プレゼントしたこの本を、実家の母はどう読んだかと聞いてみよう。
2024/08/21
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