5と3/4時間目の授業 (講談社文庫)
5と3/4時間目の授業 (講談社文庫) / 感想・レビュー
活字の旅遊人
きのくに国際高等専修学校で行われた講義録。文学というものの自由度を改めて認識させてもらう。絶対の正解はない。その人の、その作品の価値。いい話だが、そこに評価や損得を考えざるを得ない社会から、僕たちは逃れられない。だから自分を出せばいい、というだけではやはり無責任なんじゃないだろうか。講義の中で、人に読んでもらうつもりで文章を書くから、良いものが出来上がる、という趣旨の話もあった。納得しつつ、矛盾も感じる。が、やはりここも程度や配分の問題か。自分で考えることの大事さは、便利な世の中でも忘れてはいけないね。
2022/12/30
りんだりん
当たり前、常識、当然、絶対と言われるものを疑ってみる。人それぞれの考えや感じ方を受容していくことの大切さ。頭ではわかっているのに実行するのがとても難しい問題。"大人"になると当たり前や常識と呼ばれる範囲を外れた言動をすると居心地が悪くなる。"大人"は子どもたちに、部下に、仲間に「正解」を教えようとする。しかし本当はそんなもの無いのかもしれない。冒頭のような社会が訪れて世界として成り立つならどんなに素晴らしいことか。それが難しいからこそ身近なところからでも挑戦することが大切なのかもしれない。オススメ。★4
2022/06/01
山ろく
「きのくに国際高等専修学校」の小中高校生に、読むことと書くことについて著者が行った2日間の授業の記録。ナルニア国物語の「先生」を引き合いに「教えないこと」について考え、なぜソクラテスやキリストは自分で記録を残さなかったのかという問いから始めて、「これが正解」という読み方をさせないためではないかと説く。だから「自分はこう読んだ」が大事だと。また「自由に書く」とはどういうことかを作文を書かせて考える。「添削はしない。その人の作文でなくなるから。「こうしたかったなあ」と思うことでまた書きたくなる」。賛同したい。
2023/12/20
めがねざんまい
本が人生の先生、その先生たちは読む人それぞれに違う解釈がある。この先生の役割は、一つの狭い常識に囚われている人にそうじゃないよと教えてくれて、その答えは自分で見つけなさいよ、と言ってくれることだと解く。本との出会いで自分の世界や価値観が広がることを私も実感するので共感。ラストに登場する木村センさんの文章、農家育ちで文字を習うことも許されなかった彼女が最期に遺書を書くために文字を学ぶ、なんてのはなぜ勉強しなければならないのか?という問いを吹き飛ばすほど力強いストーリーだった。
2022/06/26
なつのおすすめあにめ
面白そうな授業だ。宿題の作文も良かった。でも、一番胸に響いたのは木村センさんの文章、遺書。名文、美文の定義からは外れるであろうその文章は、しかし他の誰にも書けない本当の文章なのかもしれない。
2024/07/02
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