掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集 (講談社文庫 へ 11-1)
掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集 (講談社文庫 へ 11-1) / 感想・レビュー
KAZOO
短篇集です。かなりの評判になっているので手に取りました。アメリカの比較的下層階級であるような物語なのですがカラッと乾いたような感じの印象を与えてくれます。そのような気候なのかもしれません。また第三者的な感じで書かれているからなのでしょうか。ある意味自分の日常の仕事や生活などをうまくエッセイ風に書かれている気がします。少し異なるのでしょうが、ヘミングウェイの短編を思い出しました。
2022/11/16
アキ
最近読んだ著者の「すべての月、すべての年」がとても良かったので、新しく出た文庫本で再読した。一度目では入り込めなかったが、再読で彼女の人生に没入するように耽読した。一人称で、または三人称で、時には登場人物の一人として彼女の実体験を元にした刑務所やアル中、ガン末期などのきつい状況にいる物語に、この小説の中の言葉「魂の気高さ」を感じさせる文章が直接心に訴えてかけてくる。『さあ土曜日だ』の中の文章「犯罪者の頭と詩人の頭は紙一重だ。どちらもやっていることは、現実に手を加えて自分だけの真実をつくり出すことだから」
2022/05/12
はっせー
海外文学をこれから読もうと思っている人にぜひ読んでほしい本になっている。ルシアベルリン。この本を読む前まで知らない作家であった。読んでみての感想は作品自体が万華鏡のようなものであった!ルシアベルリンさんの実体験とフィクションを混ぜた短篇集となっており、その曖昧に混ざり合っている感覚がとても心地よい。そして万華鏡のような作品と思った理由は作者自身が多面的であり同じ人の人生を描いた作品なのに印象が全然違うのである。これは初めて万華鏡をみたときの感想と似ている。またルシアベルリンさんの本が読みたい!
2023/01/27
nico🐬波待ち中
カラフルな色彩から色味の全く感じられない灰色まで。次に現れる文章は果たしてどんな色味を放つものなのか。浮き沈みの激しい荒波に読み手ものみ込まれそうになる。けれどそれら全てが、同じ一人の女性の人生。波乱万丈な継ぎ接ぎだらけの彼女の人生を、一つ一つ丁寧に重ね合わせていった中身の濃い一冊。様々な色合いの文章の端々に覗かせる明るさと知性に目が離せなくなる。どこか他人事のように客観的に綴られた彼女のリアルな人生。「後悔はないと言ったけれど、あれは嘘だ。でもあのときはこれっぽっちも後悔しなかった」この潔さがいい。
2022/05/05
tsu55
短いセンテンスを積み重ねていく、簡潔でスピード感ある文体が気に入った。もとの英文が良いのか、訳者の手柄なのか、あるいは、その両方なのだろうか。 自己の体験をもとにした話でありながら、内面描写をぎりぎりまで削っているので、なにか乾いた印象を受ける。それも気に入った。
2022/10/09
感想・レビューをもっと見る