パリ万国博覧会 サン=シモンの鉄の夢 (講談社学術文庫)
パリ万国博覧会 サン=シモンの鉄の夢 (講談社学術文庫) / 感想・レビュー
うえぽん
1855・1867年のパリ万博の理念の形成過程に係る労作。「人間による人間の搾取から、機械による自然の活用へ」というサン=シモンの産業主義的思想を継いだシュヴァリエとル・プレーがナポレオン3世の庇護の下、頭の中のユートピアを現実化したものと結論。先行したロンドン博は「大規模」万国博だったが、パリ博は百科全書的理念を反映した「万国+万有」博。肉体的必要(食衣住)から知的必要(文化芸術)まで同一種類の事物を同心楕円状に配置し、放射状に同一国の事物を配置。仏ワインや高級食器が万博発のブランドという点も興味深い。
2024/07/03
ヨーイチ
大阪万博の惨状、中学二年時に大阪・高槻の友人宅に泊めてもらい!(多分母親が何がしかの謝礼をしたとは思うが、当人は全然意識なし、飯も食わせてもらった)数日間千里に通い詰めてパビリオンを観まくった体験(正に若さとエネルギーの発散)とかで「さて万博とは何であったか」と言う誠に俗な想いから購入。久しぶりの鹿島茂、尊敬し気にしている物書きの一人。ずいぶん無茶な行動だったが「そうまでしても観ておくべき物」って感じは殆どの日本人が持っていたのも事実だと思う。第二回、三回のパリ万博の詳細な研究とレポート。続く
2023/12/17
ラウリスタ~
1992年の本を30年後に文庫化。1855年と1867年のパリ万博。サン=シモン主義者たちが、自由貿易推進者である独裁者、ナポレオン三世を支持する形で盛り上がった、政治的には体制順応で、労働者の教化とフランス製品の競争力を高めることを目指した、第二帝政下の万博。基本左翼の多い人文系研究者(あるいは同時代の作家)は万博を好まないが、過去の万博だったら懐古的に楽しめるよねという。思えばゾラも、67年万博で大賞受賞したメソニエ、カバネル(皇帝買い上げ)を批判し、マネを擁護するから、反万博なんだな。仏のブランド化
2022/10/03
MUNEKAZ
世界史の教科書で扱われる万博はロンドンの第1回だけど、本書はパリ万博。ナポレオン3世の晴れ舞台という印象も強いが、そのデザインを描いたのはサン・シモン主義を信奉する官僚だった。というわけで「万有」の博覧会。すべての産業製品を一堂に会し、高度資本主義の精神をフランス国民に教育する場として万博が開かれたとする。でもこの精神ってどこまで後世に伝わったのだろうかな。最終的に目指したのが常設のでかい博物館だったというあたり、今の国際イベントとは全然違うよなぁと。高邁な理想は風化し、非日常の祝祭が残ったということか。
2024/02/16
takakomama
パリ万国博覧会は19世紀の46年間に5回も開催されています。フランスは万国博覧会マニアですね。1855年と1867年の万博を詳細に解説。図版も多く、わかりやすいです。万博会場にタイムスリップしたようで面白かったです。サン=シモン主義の産業ユートピアの実現のために、できる限りの策を講じて奔走する、シュヴァリエとル・プレーの先見の明と行動力が桁外れに凄い! 現代のフランスの制度に、サン=シモン主義の考え方が受け継がれていると思います。
2024/06/24
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