漂流 日本左翼史 理想なき左派の混迷 1972-2022 (講談社現代新書)
漂流 日本左翼史 理想なき左派の混迷 1972-2022 (講談社現代新書) / 感想・レビュー
パトラッシュ
あさま山荘事件で新左翼が完全に国民から見離されて以後、いわゆる左派は労働運動に突破口を見い出した。しかし左翼を率いてきた社会党は国鉄ストの失敗や民営化、ソ連崩壊などで目標とすべき理想を見失って事実上消滅し、共産党も組織防衛を優先して国民の信頼を得られる未来像を提示できていない現状が浮かび上がる。日本で左派の「失われた20年」が続く一方、中南米や欧州では格差拡大やインフレへの不満を受け左翼政権誕生や議会選勝利が相次ぐ。なぜ日本の左翼は停滞から脱せられないのか、現代史の碩学というべき2人に分析してほしかった。
2022/08/21
trazom
3巻に渡った「日本左翼史」を読み終えて、多くのことを思う。「「労働力の商品化」という資本主義が内包する絶対的矛盾にどう対峙するかで左翼か否かが問われる」という佐藤さんの指摘は鋭い。今こそ、働き方や生き方の問題として「労働力」を見つめ直す運動が必要ではないのか。対談の最後で、二人は「現在の左翼の元気のなさ・影響力の弱さは、もはや彼らが「大きな物語」を語りえなくなっていることにある」と言うが、それは左翼の問題というより、大きな物語を捨て、小さな差異と目前の金儲けに走る新自由主義を選択した我々の責任である。
2022/08/14
HANA
シリーズ最終巻は七十年代から現在まで。本書は学生運動が大衆に背を向けられてからソ連崩壊、社会党の凋落から左翼が環境運動等に活路を見出した事が語られている。個人的な感想を言うと左翼は学閥ムラやマスコミの一部にのみ生き残ってるジャングルの日本兵状態だと思っているが、本書でますますその感を強くする。エリート意識だけを強くした結果、労働運動にコミットする事がなくなり、アメリカだとトランプが大統領になるし日本でも大衆から遊離しているし。とあれ現在も様々な所で現実を二分している運動の軌跡、詳しく知れて良かったです。
2024/05/18
yamatoshiuruhashi
シリーズ3部目。現代に至る。本書の書き出し(全巻の末)は自分は中学3年の終わり。高校受験の最中に浅間山荘事件、高校に入ったらすぐに「総括」と言う単語が飛び交った。そうして左翼が求心力を失っていく時代を選挙権を持つ大人として投票行動に結びつけつつ見て来たのだが、今回はその自分の時代を客観的に解説してくれる。私は保守的人間であるが、業界の締め付けにも拘らず民社党を支持していた。その頃「社公民」などという野党枠組みもあったのを本書で思い出したが、「公」は風を見るに敏であったわけか。
2022/07/30
キク
池上彰、佐藤優による戦後左翼史シリーズ最終巻。1972年から2022年の左翼組織弱体化と漂流。僕は学生運動で傷ついた作家たちの本を読んで育った世代になる。村上春樹や村上龍や高橋源一郎や坂本龍一は、学生運動で傷を負いそこから「なにを語るか」を始めている。僕はそのボイスを聴いて育ったので、基本的に全ての組織と運動に対しての警戒感を抱いている。なので、「あの時代になにが起きたのか」ということをあまり知らなかった。宮崎駿の「全ての子供は希望の塊だ。その子供はいつか大人になって絶望の塊になる」という言葉を思い出した
2024/04/21
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