はぐれんぼう
はぐれんぼう / 感想・レビュー
シナモン
クリーニング店でバイトをしている優子。ある朝服でぐるぐる巻きの着ぶくれ状態で目覚めた。その服たちはクリーニング済みなのに引き取り手が現れない「はぐれんぼちゃん」たちで…。持ち主が見つからない「はぐれんぼちゃん」の行く末は悲しい。「捨てられないけど遠ざけたい」そういうもの、私にもあるなぁとズキッ。不思議な世界に迷い込んでいくような独特の読み心地。大事なことを教えてくれる一冊でした。
2023/01/10
とろとろ
持ち主が長く引き取りに来ない衣服を自宅に持ち帰る。翌朝目覚めるとそれら衣服が身体全体を覆っていた。主人公は衣服の持ち主を訪ねるが全て受け取りを拒絶される。まぁねぇ、自分だったらそんなお節介はしないな。こうなることは目に見えているから。持ち主を訪ねている道中で出会った謎の男に導かれるまま、クリーニング工場を目指す。しかし、そこはスーパー銭湯になっていた。というなんだかよくわからない設定。これ芥川賞的な話だと思って、著者の履歴を調べたら…ね。で、最後は全部元の持ち主に還るのだが、それは何かの暗示なのかしら…。
2023/03/09
えみ
今年一かもしれない。何を読まされたんだ!?と全力で問いかけられる小説に出会った。もう一度確認してしまう、何を読まされたんだろうか…。いい意味でも悪い意味でも奇妙でぶっ飛んだ内容。理解の仕方によってはホラーとも言える、はぐれんぼうの隠された意味。読んでいくうちにじわじわとにじり寄ってくるような微妙な現実相違の感覚は、知らず知らずに苛立たしさに変わっていく。クリーニング店で働いていた者達が見捨てられた服たちに操られるように辿り着いた倉庫。そこは天国なのか地獄なのか。理由と結末が描かれてない分、疑念だけが残る。
2022/11/03
kei302
はぐれんぼう:クリーニング店に出したのに、持ち主が引き取りに来ない服たち。引き取りに来てもらえるかもしれない宙ぶらりん感、忘れられた存在、確信犯的に“捨てられた”のかも。「あってもなくてもかまわない」存在、そんな不安定さがクリーニング店で働く主人公優子と重なる。身に着ける物には念が取り憑いていそう。青山さんは、大きい方をスコップ、小さい方をシャベルとして扱っている。
2022/09/24
よこたん
“せっかくきれいにクリーニングされたのに、今晩倉庫に送られたら、このはぐれんぼちゃんたちはもう二度と、ここに戻ってくることも、持ち主のもとに帰ることもないだろう。” 持ち主が引き取りに来ない衣服の行く末は。捨てられないけど、置いておきたくないものは、厄介だ。だが、それは持ち主の勝手な思い。衣服にだって思いがあり、それはエネルギーを持っている。東直子さんに津村記久子さんを足して、SFファンタジー、社会風刺にホラーをふりかけたような風味。青山さん、これは色々とこわいよ。ただ、カニカマ料理は美味しそうだった。
2022/11/14
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