私のことだま漂流記
私のことだま漂流記 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
山田詠美さんが文学修行時代に大いに励まされたのが、毎日新聞に連載されていた宇野千代のエッセイ「生きて行く私」だったそうだ。その同じコーナー「日曜くらぶ」を、御年63歳になった詠美さんが担当して書いたのがこれ。新聞への連載ゆえか、毒舌は影を潜めてはいるが、訴えと叫びは心底からのものである。修業時代から今日にいたるまでの半生記のスタイルをとる。63歳といい、半生記といい、時間の流れの速さになんだか、感無量といった気分になる。こういうのを書いても山田詠美はさすがに上手い。詠美ファンには強推薦!
2024/07/26
starbro
山田 詠美は、新作中心に読んでいる作家です。本書は、本格自伝小説という触れ込みですが、自伝小説というよりも、自伝的エッセイでした。著者はイメージよりも真っ当な人生を歩んでいます。しかし宇野千代を師として仰いでいるとは思いませんでした。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000004583.000001719.html
2022/12/10
R
自伝というには、軽くて読みやすすぎて、エッセーなのだけども語られる内容に時代を感じて、文壇という怪しからんものの香りを嗅げるものでとても面白かった。デビュー時はすごく大変だったろうことがわかるのだけど、怨念めいた恨み節ではなく、そういうこともあったと、もはや昇華してしまっている強さが読めて楽しい。小話のように、でてくる挿話は歴史の生き字引的な風もあって、文壇のある時代を生きた人なんだと、その語りを聞けるようですごくよかった。
2023/05/15
ネギっ子gen
発表舞台が、リスペクトする宇野千代先生の『生きていく私』と同じ毎日新聞紙面。エッセイと見紛う“「根も葉もある嘘八百」のような自伝めいた小説”。著者は、生まれて初めて書いた小説でデビュー。<20代半ばだった。今現在とは全然異なるポイントにおいて厳密だった私。色々と許せないことが多かった。では、今、60を過ぎてどうかと言えばずい分と柔らかくなったのである。いい加減さをマスターしたのか、世に言われる「こだわり」というものが格好悪く思えて来た>。著者あまり読んでない。以後心して読みたし。えっへん! ははははは。⇒
2023/05/13
nonpono
一関に移動中。山田詠美の自伝。今日は充電と時間があるから読めた。改めて、わたしにバリ島と宇野千代先生を教えてくれたのは山田詠美だと再確認出来た。そして読書の地図は広がるんだ。もう宇野千代先生が最高にかっこよく艶っぽい。宇野千代先生が山田詠美という作家に目をかけたのは、今になり俯瞰してわかるような気がする。才能と才能が共鳴したのだ。そんなハーモニーが優しい。最後の阪神大震災の被災者の山田詠美のサイン会に来たファンの方の、全てを失ったけど山田詠美の新作を読める自由に励まされます、に大号泣。血の通った言葉だ。
2024/10/10
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