ビブリオフィリアの乙女たち (星海社FICTIONS)
ビブリオフィリアの乙女たち (星海社FICTIONS) / 感想・レビュー
雪紫
森鴎外「舞姫」、宮沢賢治。解釈は読むひとそれぞれ。その解釈を重ね合わせ突き動かされた人間の謎と罪を本を読んだ人間の感情が読み取れるサイコメトラーと幼馴染のディスレクシア探偵が紐解いていく。様々な悲劇と解釈が心を蝕む。元凶ですら歪んだ面がどんどん出て来るし・・・文詠は自己肯定が低いから花奏の気持ちに(わかりやすいのに)気付かない。ただ、作中の図書館は羨ましいし、花奏や終盤の解釈に救われるものがある。「舞姫」・・・相当やばい話では。
2024/08/12
よっち
本を読んだ誰かの記憶を読み取る図書部員・文詠。あの日、図書館で絵本に遺された黒いコートの男と撃ち殺される自分を幻視した不可解な誰かの記憶に遭遇する学園ビブリオミステリ。日本童話文学から次々と現れる黒いコートの男の正体、それを幻視した読者は誰なのか。森鴎外『舞姫』と宮沢賢治『春と修羅』の解読から、識字障害の幼馴染・花奏とともに悲劇の真相へと迫る展開で、エピソードが繋がる中で見えてくる様々な人間模様、自己肯定感が低く花奏の思いに気づけない文詠はなかなかもどかしかったですけど、二人で挑む謎解きを堪能できました。
2023/02/05
半熟タマゴ
文学作品から紐解くビブリオ学園ミステリー。『舞姫』『ごんぎつね』など作品の解説や解釈が興味深くて面白かった!本を読むとそれを読んだ人の記憶を読み取る文詠と本が読めないけれど物語が好きな花奏の関係も良かったです。二人の物語をもっと読んでみたいので続きもでますように。前作と比べると百合描写が控えめなのでミステリー、日本文学好きな方にも広く読まれて欲しい作品ですね。特に宮沢賢治の作品が好きな方は是非。『春と修羅』は物語の大きな鍵を握るのでいつかちゃんと読んでみたい。
2022/10/16
ほたる
森鷗外『舞姫』から宮沢賢治へと繋がるビブリオミステリ。豊太郎とエリスということで拗れそうな感じはしていたが、やっぱりそういう方向へ持っていくのかと。推理を組み立てていく純粋な部分も良かったが、そこにさらにサイコメトリーの能力が加わることで、より深く推理することができるようになる展開も面白かった。隠された真相に辿り着くためにしっかりと考えを繋ぎ合わせていく、ミステリを楽しむことができる一冊。
2022/10/23
うさみP
一目、百合に挟まりたい(邪悪)。舞姫、狐、象。そして、おれはひとりの修羅なのだ。本と銃のどちらを選ぶだろうか。物語以上に読者の気持ちを読める地味少女と、文字は読めないけど文字以上の物語を読めるギャルの凸凹愛書家で豚骨ラーメン何杯でも活ける。百合百合だけど、性を超えた、個から個への歪んだバランス感覚が素晴らしい。汚れたくないけど純潔であり続ける度胸も強さもなく、汚れる勇気もなく、蕾から咲きたくないけど、花を咲かす姿に憧れる感情劇。全体として伏線要素が込み入っていて、そこを整理したら更に面白かったのでは。
2024/09/22
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