完全犯罪の恋 (講談社文庫 た 122-2)
完全犯罪の恋 (講談社文庫 た 122-2) / 感想・レビュー
クプクプ
タイトルは過激ですが、内容は落ち着いていました。川端康成や三島由紀夫の本を高校時代の恋人と読み合うシーンが効果的ですし、主人公の高校時代と現在の二つの時代が見事に描かれていました。田中慎弥はスマホを持たず、原稿も手書きだそうですが、時代に乗ろうとしないことで、かえって二つの時代背景を描けてしまった印象です。読んでいて、ところどころ映像が浮かびました。Twitterを駆使する平野啓一郎と対照的ですが、この作品で田中慎弥は平野啓一郎を上回ったと感じました。ぜひ、映画化を希望します。
2022/12/01
優希
恋愛小説ですが、所謂普通の恋愛とは趣が違うように感じます。生々しくて痛みを伴う心理がまざまざと展開されています。田中氏はくどくてもどかしい心理描写をさせたら右に出る人はなかなかいないのではないでしょうか。
2024/07/29
ω
うん、田中先生はいつも真面目に小説と向き合っていて凄く好印象ω !! 暴力とか田舎が得意な作家さんという印象だったので、恋愛モノとは珍しい。川端と三島の自殺が出されてて、割と楽しく読めた!
2024/10/16
沙智
かなり良かった。痛みに満ちた恋愛小説だ。著者の経歴的にもっと硬い小説かと想像していたが、全然そんなことはなかった。解説でも触れられているが、田中と静の小気味良い会話の掛け合いがとても楽しい。捲し立てるように喋る静がなんともいえない良い味を出してる。71頁の田中が語る過去のエピソードにその話盛ってるでしょと茶々を入れるところが特に良かった。2人ともやや性格に難があるが、目の前の相手に真剣に向き合っている。血の通った人間の物語であると強く感じた。
2023/02/05
村山トカレフ
相変わらずたなしんは心象風景の描写がうめえ。くどくて、ねちっこくて、もどかしくて、生々しくて、まざまざとしていて、どうしようもなくて、残酷で、取り返しがつかなくて、生硬あわせ持っていて、生活臭が漂っていて、醤油臭くて、ひねくれていて、無邪気で、凶暴で、優しくて、無関心で、普遍的で、切なくて、悲しくて、ひたすらに美しい。可読性はけっして良いとはいえない作品が多い印象だが、本書はサクッと読める。静とのやり取りは軽妙でありつつも、ひりつく緊張感がある。解説はみんな大好き紗倉まなちゃん。あ、これサイン本だぜ。
2023/03/13
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