言語ゲームの練習問題 (講談社現代新書)
言語ゲームの練習問題 (講談社現代新書) / 感想・レビュー
trazom
若い頃、ヴィトゲンシュタインの「言語ゲーム」の考え方に初めて出会った時の戸惑いを思い出す。直示的定義、ルール、私的言語、ふるまいの一致などの用語を、概念として理解するのに難渋しただけに、練習問題という本書のアプローチは非常にユニークで有難い。著者が指摘しているように、本書は「ヴィトゲンシュタインの解説書」ではなく、正に、「活動の体系」である言語ゲームの考え方を通して行う社会学的演習なのかもしれない。最近の生成系AI(ChatGPT)の登場を見ながら、ふとヴィトゲンシュタインに思いを馳せる今日この頃である。
2023/05/23
へくとぱすかる
社会学者の著者が、分析哲学を自分で基本からやってみた本。だからこそ、知識や教養でない、本来の哲学のあり方が表れているし、読みやすく、アプローチが新鮮。おかげで言語ゲームというものを、ようやくわかったような気がする。なぜ「語りえぬもの」があって、そこから先が行き詰まるのか。辞書の説明で、基本的なことばほど理解に苦しむのはなぜなのか、それが納得できる。ラスト近くになると、現代社会とのかかわりの記述が増えていくが、それが著者の「応用問題」としての提起だろう。自分としては<私>の問題をさらに深めていきたいと思う。
2022/12/24
ころこ
遠い説明的な概念は「本質」だろう。使用、流通があって、はじめてルールのようなものが立ち上がっているようにみえる。言語ゲームによって、あるとき分かる。しかし、そこにルールの本質は無い。共通しているのは、終局的には外部性が無いということだろう。外部性が無いということはメタ構造が生じないため、正統性が確定されない。本質が無いということは人生観に影響を与える。最初に私の死と世界の死の話が出てくる。私は世界の中心ではない。言語ゲームが出来なければ世界は存在しない。「本質」と「分かる」が触れあっていないのが興味深い。
2022/12/23
特盛
評価3.8/5。社会学者橋爪氏が、後期ヴィトゲンシュタインの重要概念「言語ゲーム」を平易な問いと、共に考える形で語る。言語ゲームとは規則に従った人々の振る舞いの一致、とする。元々は東工大の学生向けの社会学の授業で、社会学にかなり引き付けて、ポイントを絞っての展開だ。この概念も社会学も包摂性の高い概念ゆえ、橋爪節でのアレンジが光る。ポストモダンも相対主義もある意味悲観的だ。一方言語ゲームを肯定的なアプローチとして捉える。臨床的ということだろう。また人間ヴィトゲンシュタインに対する愛も伝わるのがいい。
2024/06/30
田氏
ウィトゲンシュタインの哲学は『論理哲学論考』よりも『哲学探究』のほうが“実用的”だ、と言っていたのは誰だったか。後者のコアとなる考えが、言語ゲーム。言葉って、すでにある事物と一対一に対応して生まれるっていうより、何を指し示すかの当てっこゲームでの「わかった!」みたいな何かでできてるよね、的な。この考えは、倫理学などの価値論、社会学や経済学その他もろもろに敷衍できて、なるほど確かに実用的だ。この本は、自身でいわく「オモチャのような」ものではあるらしいが、社会のなりたちを考え、実用の一端に触れることができる。
2023/02/10
感想・レビューをもっと見る