無情の世界 ニッポニアニッポン 阿部和重初期代表作2 (講談社文庫 あ 86-12)
無情の世界 ニッポニアニッポン 阿部和重初期代表作2 (講談社文庫 あ 86-12) / 感想・レビュー
ソラ
4編収録された中編集。どの主人公も自意識過剰というか自分という存在を特別視し暴走に至ってる印象。ただ、そういう面は誰しもに内包してるところがあって、そういう自分の嫌なところを目の前に曝け出さされているみたいでいい意味で不快だった。
2023/04/01
ソラ
【再読】
2023/07/23
寺基千里
久しぶりに読み返してみて、「ニッポンアニッポン」の無常感の凄いなと思った。トキを逃すか殺すかを綿密に調べ上げていくその情報量も凄いのだけど、その計算は完璧だったはずが実際にトキを捕まえようとするとどうにもならない事への諦めが一気にやってくる終盤が印象に残っている。情報はどうにでも扱えるけれど、人や動物など「モノ」は思うようにならないこのどうしようもなさが突き付けれた事が鴇谷春生に対して虚しさを感じさせて心を折ったのだと思った。 この印象でより「ニッポンアニッポン」が好きな作品になった。
2024/06/04
P_CAPT
阿部作品はホントに映画的で面白い。暴走する家庭教師の物語を、教え子が被害者宛にしたためた手紙で語る。エロスな衝動の先に遺体を発見してしまうという物語は、ネット掲示板に掲載された相談。グロテスクな暴力が繰り返されるが、これから事件が起こるという不穏なシーンまで遡り、意外な人物目線でのラストシーン。この入れ子構造の仕掛けも阿部作品の醍醐味。
2023/08/23
otogination
約20年ぶりの再読。阿部和重がとりわけそうだが、純文学作家は常に新しい手法を追求するため定番をくり返すということをしない。ゆえに一人称で狂気的な人物の内的独白という形式の『アメリカの夜』や『I・P』にあるような、ある種の狭さから出て三人称のリアリズムで書こうとしたのは理解できるのだが、単に三人称だからということではなく、この主人公と語りの距離の取られ方、平板さ等やはり面白くない。
2023/12/25
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