私は女になりたい (講談社文庫 く 81-1)
私は女になりたい (講談社文庫 く 81-1) / 感想・レビュー
さてさて
『あの人と出会う前の私は仕事だけに生きる女だった』。『美容皮膚科医』として『雇われ院長』を務める主人公の奈美。この作品では、そんな奈美の日常に突如現れた一人の男性の存在によって奈美の日常と感情が大きく変化していく様が花の名前がつけられた6つの短編の中に描かれていました。窪美澄さんの巧みな比喩表現にすっかり酔うこの作品。絶妙な物語展開に窪さんの上手さを感じさせられるこの作品。「私は女になりたい」と名付けられた書名の奥深さに、人生は誰のためのものなのか?、そんなことをふと考えてもしまう、素晴らしい作品でした。
2024/06/16
M
タイトルとは真逆で、奈美は、実はいわゆる男っぽいサガのせいで、息子や周りの女らしいタイプから誤解を受けるんだろうなと歯痒くなった。黙々と仕事をして経済的に家庭を支え、大事なはずの身内やスタッフの感情の機微にはあまり気が回らず、性善説で。問題が起きても独りで抱えて黙々と解決しようとしてしまう。女だからそれを冷たいとみなされてしまう気がした。不器用で真摯な生き様を理解してくれる人に支えられてもいて安堵する。『すればするほどよくなる』その辺りは、奈美と公平が深く愛し合っていることが伝わってくる文節だった。
2023/07/11
優希
トランスジェンダーの話と思ったのですが、恋愛小説でした。夫と離婚後仕事一筋にやってきた奈美が、ふとしたことで14歳年下の公平と恋に落ちます。頑なにひとりで生きていこうとしてきた世界が灰色から色彩を帯びたように見えました。純粋な恋愛小説と言っても良いでしょう。
2024/02/13
おっしー
窪美澄作品、2作目。バツイチ子持ちの47歳の美容皮膚科医が14歳下の男と恋愛をする話。恋愛をすることで院長でもなく、母親でもなく女性になる。邪な気持ちのない純粋な恋愛だと感じた。話の中では年齢差があることに引け目を感じている描写はあれど、それを否定も肯定もせず、自然に描かれているのが個人的に好みだった。この苦難を2人で乗り越えた、みたいな展開だったら多分あまりのめり込めなかったんじゃないかな。家庭や職場の問題はあるし、ちゃんと恋愛をするのは難しいと思う。けど、恋愛をすることで女は女になる。良いじゃんね。
2024/03/09
桜子
単行本で読んでいたけど、また読みたくなって今度は文庫で。幼い頃や青い春の時代の恋愛も、若かりし頃の恋愛も、そして大人になった恋愛も、どれもかしこも愛おしい。大人って歳を重ねたからではなく、大人として振る舞おうとする、大人として立とうとする人が大人なんだと感じさせられた。窪美澄さんの本は、それだけじゃない何かがあって、好きだなぁ^^
2023/08/26
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