今を生きる思想 マルクス 生を呑み込む資本主義 (講談社現代新書)
今を生きる思想 マルクス 生を呑み込む資本主義 (講談社現代新書) / 感想・レビュー
パトラッシュ
産業の発展が即ち資本主義とされた時代には、マルクスの思想が有効だった。上部構造と下部構造、労働力の商品化と搾取など、資本主義社会の抱える矛盾や諸問題を分析できたのだから。しかしマルクス主義に基づく社会主義政治が失敗した結果、批判者を失い暴走した資本主義体制が一層奇形化したのも事実だ。こうした事態に対しマルクスの考えを参照し、人間らしい世界をつくる動きに関心を持とうと呼びかける主張は理解できる。しかしAI知能やゲノム編集技術が神の領域を侵すほどまで発展する時期が目前とされる今日では、もはや手遅れではないか。
2023/05/27
skunk_c
本書の肝は第三章の「包摂」にあると思う。冒頭にある(p.19)「労働は人間の生活を豊かにするはずのものであるのに、資本主義社会では労働力が商品化され、労働過程とその生産物が利潤追求の道具となるために、働く者は自らの労働の主人でなくなってしまう」という説明を読んだとき、入門的シリーズの本書で、この部分で一体どれだけの(過去にマルクスに取り組んだことがない)読者が理解できるのかと疑問を感じた。第二章にこの件の解説もあるがやはり少々難解。やはり『資本論』をコンパクトに解説するのは相当な力業がいると感じた。
2023/09/03
Aster
危険な本、正しすぎて。
2024/02/07
ちょび
読めば読むほど資本ってなに?と考え込んでしまう。資本と言う得体の知れないものに資本家も労働者も(支配する側もされる側も)囲い込まれ(包摂)身動きできない現実が世界中に広がる。資本主義から更に金の亡者化(感動・笑顔・共感etcまで商品化されている)した新自由主義の下で人々が苦しんでいる。この閉塞状態から抜け出す方法を見つけることは難しい。が「我々の魂が監禁され絞殺されようとするとき、泣き、叫び、怒り狂ってよいのである」と著者は言う。連帯し小さな流れから大きな流れを作り出して少しでも明るい未来を手にしたい。
2023/09/21
tokko
「資本論」が読みかけで、なかなか理解に苦しんでいるところに、ちょっとでもいいから理解の支えになるものが欲しいと思って読み始めました。もちろん「資本論」の網羅的な解説ではないけれど、いくつか「そういうことだったのね」というところが思えるところがあります。気になるキーワードとしては「資本の他者性」「実質的包摂」でしょうか。19世紀の古典的資本主義では資本の利益と労働者の利益がトレードオフの関係になっていた部分がありますが、現代では労働者が資本の利益を優先させることを疑いません。まさに「包摂」というわけですね。
2024/01/07
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