江戸の岡場所 非合法<隠売女>の世界 (星海社新書)
江戸の岡場所 非合法<隠売女>の世界 (星海社新書) / 感想・レビュー
パトラッシュ
江戸の色町というと吉原ばかり取り上げられるが、あちらは大名や富裕層相手の高級公娼であり、中下層階級の庶民が通うのは品川や新宿、深川、千住など非公認の私娼を擁する岡場所だった。上層階級しか見ていない幕府が売春婦を統制しようとしたのに対し、岡場所の主は「自分たちは百万都市の住民の需要に応えている」との自負があったようだ。岡場所排除をもくろむ幕府の方針も結局は空転し、吉原以上に文化の発信地となっていった。その岡場所にも入れない夜鷹の生態まで筆は及んでおり、江戸期の下半身の歴史を考える貴重な材料を提供してくれる。
2023/08/07
ばんだねいっぺい
清濁併せ呑む方がよいとも思うが、公認、廃止、復活の流れには、お金の川があって、それは、犯罪や人権蹂躙の温床になるので悩ましい。
2023/04/09
小谷野敦
著者は前田愛の弟子の、近世戯作が専門だが、概して近世遊里のいくらか趣味人的な研究を読物にしてきた。これは岡場所に焦点を当てているが、四宿というより深川に力が入っている。視点は近世江戸の富裕な町人のもので、最後に「跖婦人伝」を本気になって紹介するあたりは、中村幸彦の、戯作は単なるちゃかしであって風刺の名に値しないという言をちゃんと受け止めていない。また全体として下層娼婦にエモさを感じているあたりは永井荷風、川端「雪国」の感性であろう。
2023/05/18
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