旋回する人類学
旋回する人類学 / 感想・レビュー
チェアー
第4章の「秩序のつくり方」で述べられている国家についての議論の変遷はとても参考になった。国家を文明の産物とみる見方から、国家がなかった集団があったことに言及し、グレーバーは国家と非国家の間で行き来する人々がいたことを明らかにする。全体的に難しすぎて読み飛ばした部分が多数。人類学の素養がなければ読み通すのはかなり難しいか
2023/06/13
タナカとダイアローグ
人類学150年の歴史を松村先生のパースペクティブで説明してくれている。かつては植民地支配の知識として、今は資本主義の解毒剤として人類学は有用だと思う。民主主義だって、非西洋起源があるわけで、近代(ヨーロッパ発)がすべて最先端な訳ではない。貨幣に代替されずとも人間関係は維持される。発展(必要?)はなくとも自殺は無いなど、生きてるってなんだろうを問い直す人文的な仕事でもある。科学的じゃない批判もありながら、実験現場にも参与観察することで、呪術とそんなに変わらんくない?と相対化する懐の深い学問。グレーバーを追う
2023/09/03
msykst
「世界には唯一の道しかないわけではない。(...)だがもはや、かならずしも別の選択肢を示すためにエキゾチックな場所に出かける必要はない。私たち自身も意識しないまま実践している異なるロジックの所在と可能性を指し示すこと。それが現代人類学のたどりついた「比較」である。」(P204)
2024/08/21
Kyohei Matsumoto
松村先生の本。密かに医療従事者に大人気である。この本は人類学に興味ある人は全員読んだ方がいいというくらい重要書物だと思われる。西洋でないものを探究する試みとして始まった人類学という学問はいろんなパラダイムの変遷を経て今は世界の見え方が多層である実態を他者と共に探究する学問として地平が見えてきたのだ。とても面白い本だった。人類学の姿勢を学んだら生きることが楽しくなるだろうと思う。なぜなら人類学にとって世界は豊かで新たな発見が絶えず起こり他者とともに学び変容していくことだから。生きることを楽しむ学問なのだ。
2023/05/31
馬咲
異なる社会・文化を比較し差異を浮き彫りにすることが、翻って自分達の社会の側にも新たな見方を促す。そうして人類学は未開/文明のような二分法や「進化」「発展」といった単線的な思考から脱却すべく、自己批判を繰り返してきた。その姿勢の本義は、そうそう綺麗にカテゴライズできない複雑な現実を捉え直すため、分かりやすい答えを求めるのではなく「問い方」の可能性を広げていくことにある。「旋回」は、そんな人類学の格闘の様相を表す的確な言葉選びだと言える。自身が安住している世界観に積極的に揺さぶりをかけにいく姿勢、見習いたい。
2023/06/27
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