春、死なん (講談社文庫 さ 127-1)
春、死なん (講談社文庫 さ 127-1) / 感想・レビュー
いちろく
表題作、妻を亡くした70歳の男の性と息子家族との関係を描いた中編。これまでテーマ的に出会う機会が少なかった単身の高齢男性の性に上手く切り込んだ内容でもあり驚く。男性向け雑誌ネタをはじめ、当該業界のトップランナーでもある著者が紡ぐ当事者性が作品の中に落とし込めている印象もあった。一方で読み進めても卑猥という雰囲気はなく、二世帯家族の掘り下げも鋭くて純文学的な雰囲気も覚えた。巻末の田中慎弥氏による家族についての解説で、より作品が腑に落ちた部分もあった。
2024/06/05
えりまき
2024(13)妻に先立たれた70歳の男の話と、母と娘の2編。生と性。孤独を感じ寂しくなるお話でした。
2024/01/20
Katsuto Yoshinaga
“スキャンダラスでエロい”ことを期待して、良い意味で裏切られた『最低。』に続き、またも良い意味で、ウラ筋に裏切られる。「縛り付けられるのを、お互いやめにしませんか」「こうやって生きる気力を、吸い取られ続けられるのも」と書いた著者に、解説の田中慎弥氏が「それにしても、世の中どうして家族が重視されるのだろう。(中略)家族を書いたのではなく小説を書いたんですけど、(中略)うんざりする。我々はまだこのうんざりを蹴散らし切れない」と書き、著者がこのうんざりを蹴散らしそうだと期待を語る。注目すべき作家が増えた。
2023/04/29
沙智
家族という共同体や性のままならなさなど人間の本質的な部分を突きつけられる2篇。何と言っても文章が良い。老人の性という題材でありながら、汚さや生臭さは感じず、軽やかで透き通っているような印象を受けた。表題作よりも母娘の話の「はなればなれ」が好みかもしれない。母の肉体へと近付いていくことを拒む主人公の一連の独白は凄味があった。
2024/05/20
kazu4
紗倉まな氏、何故70歳の男性の内面を描ける⁉️ まさしく、小説家です‼️ 解説でも『山の音』が出てきますが、信吾の一面を富雄の中に垣間見ました。
2023/07/30
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