失われた時を求めて(1) 第1篇 スワン家の方へ 1
失われた時を求めて(1) 第1篇 スワン家の方へ 1 / 感想・レビュー
扉のこちら側
初読。2015年1046冊め。【58-1/G1000】読むかどうか迷っていたけれど、読友さん達の励ましで全13巻の読破を目指すことに。まずこの巻はプロローグ的な位置づけで、語り手が夢うつつの状態で思いだすコンブレーという小さな町での幼少時代の記憶が延々と描写される。断片的で、生きた過去を返してはくれない思い出。しかし後日、かの有名な「紅茶にひたしたマドレーヌを口に入れた瞬間に」、幼少時代にコンブレーで味わった同じマドレーヌを思い出し、そして一気にコンブレーの全てが生きた姿としてよみがえる。
2015/09/11
白のヒメ
この年まで生きて、記憶を思い出すと息が止まるような郷愁に駆られることが多くなった。「子供の自分」に無償の愛をくれた「存在」の多数。親達、親族、他。その温かい思い出を、この物語の主人公に思わせるきっかけは、紅茶とマドレーヌであり、それは読者である私にも同じ記憶の蘇りの香りと味がある事を思い出させた。・・・二度と戻らない時間、もう二度と会えない愛する人達。人生の残りの時間が少なくなればなるほど、人は過去の記憶をこのように色彩豊かに思い出すのだろうか、失われた時を求めて。一巻目から共感しすぎて涙腺崩壊。
2014/09/17
かもめ通信
読み比べのため斜め読み。1996年初版というこの集英社版の一番の読みどころは、なんといっても別刷りの「月報プルーストの手帖1」に掲載されているル・クレジオの「鍵となる言葉」(浅野素女訳)だ。プルーストの、そしてこの『失われた時を求めて』の魅力を、美しく、わかりやすく端的に語っているル・クレジオのこの文章に思わず心の中で共感ボタンを押しまくり、何度も読み返してしまった。
2017/01/14
NAO
寝付けない夜のとりとめもない意識の流れの中で思い出されるコンブレーは、断片的な過去でしかない。「私」の頭の中にたゆたっていた過去の思い出は、紅茶とマドレーヌに触発されて、初めてはっきりとしたものになる。なんという、斬新かつ美しい導入だろう。コンブレーという別荘地の、我が家から伸びていく二つの方向で象徴的に表される二つの世界のうち、1.2巻ではブルジョワの世界が描かれていく。プルーストの描写は絵画的な面と音楽的な面を持つが、この巻では、とりわけ風景の描写が美しい。
2015/07/10
三柴ゆよし
寝る前の一時間ほどで読み進め、約八日で読了。語り手たる「私」による、眠れぬ夜の輾転反側にじっと寄り添う注意深い読者は驚愕する。枝葉末節の膨大な集積でしかないこの小説の、どの細部を切り取ってみてもそれが小説全体に作用し、しかもその全体から枝分かれした枝葉のことごとくが物質的な実体性をもって配置されている。おッと思ったのは、かなり最初のほうに出てくる「ニスのにおい」のくだりで、これはやはり嗅覚によって自動的に感覚される苦悩を描いており、その数十頁後にあるマドレーヌによる記憶のよみがえりの伏線になっている。
2018/06/01
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