十九歳のジェイコブ/野性の火炎樹 中上健次全集 (9) (中上健次全集)
十九歳のジェイコブ/野性の火炎樹 中上健次全集 (9) (中上健次全集) / 感想・レビュー
nina
未読の『野生の火炎樹』のみ読了。路地のすべての者の母であるオリュウノオバの手に抱かれ、この世に生をうけた混血児のマウイ。音楽の熱狂の海に埋没する黒いオルフェのように美しいその姿は見るものすべてを魅了し、欲望の眼差しを浴びれば浴びるほど黒くしなやかなその肌が黄金色に輝く。アンドロギュヌスの天使の祝福をうけながらも、路地の終焉により戻るべき場所を失った野生の魂は、悦楽に身を委ねることしか知らない永遠の異邦人となって、まだ見ぬ楽園を求めさ迷い続けるのだろう。
2014/11/07
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