アジア人物史 第9巻 激動の国家建設
アジア人物史 第9巻 激動の国家建設 / 感想・レビュー
田中峰和
西郷や大久保が明治初期に亡くなって、重しが取れたように伊藤博文が活躍する。伊藤の紹介に130頁も割いたのだから彼の重要度が分る。貧農の出だったが、運と頭脳に恵まれて出世を果たす伊藤は要領だけでのし上がったわけではない。ヨーロッパ視察によって世界の動向をつかんだ伊藤は、不平等条約から脱却するには先進国に伍する憲法を発布しなければならないと痛感する。天皇を担ぐことで維新を成功させた日本には、ヨーロッパとは違った立憲君主制を根付かせなければならない。ハルピンで暗殺された伊藤だが、安重根の誤解が元だった。
2024/05/30
mori-ful
石川健治「大いに屈する人を恐れよー伊藤博文と憲法政治」『アジア人物史』第9巻第6章が大変面白い。130頁の力作評伝。ヨーロッパにおいて万国公法=国際法や国際社会=法共同態としての欧州→国際法共同態はいかに成立したかから解きほぐし、近代日本の血生臭い成立を追う。伊藤博文は『ザ・フェデラリスト』を座右の書としていた。「大正デモクラシーは、大正帝国主義と同時並行で進んだ」「憲法が伊藤をつくったか、伊藤が憲法をつくったか」。日本における憲法制定権力は正体がわからないと思っていたので、大変勉強になる。
2024/07/10
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