アジア人物史 第10巻 民族解放の夢
アジア人物史 第10巻 民族解放の夢 / 感想・レビュー
崩紫サロメ
「人物」を切り口にすることは「近代国民国家」を一つの切り口とする歴史叙述から、幾何か解放されるのかもしれない、と思った。たとえばロシアのムスリムでオスマン帝国や日本で活動したアブデュルレシト・イブラヒム、カザン生まれだがロシア系女性でムスリム女性解放運動を模索した女性レヴェジェヴァなど「各国史」に治まりにくい人物の活動もその人脈によって章が構成されているので、自然に「越境」した描写が可能になっている。
2023/04/26
MUNEKAZ
監修が姜尚中氏で「民族解放」とタイトルにきたからではないだろうが、初っ端から朝鮮の独立運動に関わる章が三連発。内心は違えど対日協力をする知識人、欧米のキリスト教団体から支援を受けた女性、ゴリゴリの共産主義活動家と微妙にレイヤーが異なる人物が取り上げられており、それぞれの立場の違いを踏まえて立体的に見ることができる。他にアフガニスタンの国家建設やイスラム世界の女性運動家なども、あまり取り上げられることにない話題で面白い。民主主義、女性解放、民族自決といった西洋由来の思想に向き合ったアジアの人々の姿がある。
2023/05/29
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