雲は湧き、光あふれて (集英社オレンジ文庫)
雲は湧き、光あふれて (集英社オレンジ文庫) / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
【戦後70年】初読み作家さんです。高校野球をあらゆる角度(目線)や、違った年代から書き描いた短編集です。どの話も高校野球の素晴らしさを余すことなく、綴ってくれています。「代走」専門の話、高校球児を取材する野球経験なしの女性記者の奮闘ぶり、そして何より戦時中の野球球児のひたむきな情熱と戦火によって、野球を奪われた悲劇をとても短編とは思えないスケールで描いた表題作。特に表題作は先日読了した横山さんの『出口のない海』に通じる‘哀しさ’を感じます。いつの時代も、ひたむきな少年たちの夢を奪うのは‘悲劇’ですね。
2015/08/21
ユー
私自身も高校野球大好き人間です。「主役であって主役にあらず」の内容が非常に面白かった。主役は、放っておいても目立って当たり前。でも、主役以外の子達もじっくり観察すると興味深く、又、奥が深いです。
2015/09/11
黒瀬
三編からなる甲子園を目指す者たちの賛歌。腰を負傷して一試合に一打席しか立てず、走塁もままならない超高校級スラッガー専用の代走屋・須藤。本当はアナウンサーになりたかったが高校野球記事を担当することになった新人記者・泉。戦争によって失われた野球と友情を思い出す雄太。いずれもあと一歩のところで夢を奪われた若人が現状に憤り、ライバル心や嫉妬を前面に押し出しながらもしゃにむに頑張る姿が眩しいです。
2019/12/25
utinopoti27
青春真っただ中、躍動する球児たち、伝えるスポーツ記者、高校野球に関わる人たちを真正面から捉えた本書。入れ込みすぎず離れすぎず、適度な距離感の語り口が、読んでいて心地いいんです。3つの短編の中でも、表題作が秀逸。「雲は湧き、光溢れて」投手として秀でた才能を持つ一人の球児が、戦時統制下の過酷な現実に翻弄されたあげく、甲子園の夢をかなえることなく特攻に命を散らします。あの日地区大会の決勝で、最後の一球に込めた彼の熱い魂は、あの名曲とともに、時代を超えて球児たちに引き継がれてゆくのでしょう。ああ栄冠は君に輝く~♪
2017/12/28
fwhd8325
順序は逆になったけれど、順番はあまり影響がありませんでした。高校野球に限らず、スポーツは良いですね。スポーツ小説は、本当に楽しい。必ずしも、美しいだけでなく、ちょっとした心の澱のようなものが。むしろ現実感を強く感じさせてくれたようです。
2016/10/27
感想・レビューをもっと見る