恐怖の黄金時代 ―英国怪奇小説の巨匠たち (集英社新書)
恐怖の黄金時代 ―英国怪奇小説の巨匠たち (集英社新書) / 感想・レビュー
夜間飛行
福音主義の厳格な家に育ったブラックウッドは、ある時から魔術や秘教の本を貪り読み、《人間意識の拡大》を目ざす作品を書いた。牧師の家に育ったマッケンは、《土地そのものが物語を求める》故郷ウェールズの自然を忘れず、聖と魔の物語を紡いだ。この二人に共通するのは、独自の神秘観とそれに浸ることのできた不遇時代だろう。随所に引かれるラヴクラフトの言葉や、彼がダンセイニから受け継いだものも興味深かった。後半はM・R・ジェイムズを中心に、彼と接点のあった作家達の個性が語られる。全体を通して著者の嗜好が奥床しく伝わってきた。
2020/07/29
hit4papa
本書はニ十世紀初頭に活躍した英国怪奇小説作家の案内書です。ブラックウッド、マッケン、ラヴクラフト、M・R・ジェイムズ、メイ・シンクレア、M・P・シール等と、彼ら(彼女ら)に影響を与えた人々、及び作品がとり上げられています。作品は簡単な要約で結末まで書かれているので、これから作品を読もうという方には目に毒かもしれません。彼らの怪奇小説に専心した人生を知ると、読書欲がわき起こります。紹介されている作品の内容を忘れてしまった頃に、読み始めようかと思います。著者の怪奇小説への並々ならぬ知識と愛情を感じる良書です。
2019/07/04
岡本匠
芦屋川一箱古本市で購入した本。南條竹則の本は見つけたら買っているけどこんな本もあったのですね。英米の怪奇小説の作家達とその作品を紹介した内容ですが、ラブクラフト以外ほとんど知らない作家ばかり。そのラブクラフトも一冊を途中で放棄した程度。本の世界は奥が深いな。
2016/11/10
翠埜もぐら
1830年代から1950年ごろまでの英国恐怖小説の作家列伝。「一昔前の、ふるめかしい、香気ある物語」(はじめに)をラブクラフトを水先案内人として論じます。「怪奇」が密やかで慎み深い愉しみであった時代の小説が好きなのですが、「ホラー」は巷に溢れかえっていても「節度ある怪奇」はなかなかお目にかかれず案内書として大変助かりました。これを参考に古書店や図書館と仲良くしようと思います。しかし牧師や宗教家の家に生を受けて相いれない「怪奇小説」作家になる方が多いようですが、「折り合い」ってどうつけているのでしょうね?
2021/02/05
スターライト
19世紀末から20世紀前半にかけて活躍した英国の怪奇小説家(ブラックウッド、マッケン、ダンセイニ、M・R・ジェイムズ、メイ・シンクレア、M・P・シール、H・R・ウェイクフィールド)らの作品と生涯をスケッチした、コンパクトなガイドブック。といっても伝記といった大層なものではないので、読者は気軽に手にとって読める。こうした本を読むと取り上げられた作家とその作品を読みたくなるので、困る(笑)。ブラックウッドやマッケン、ジェイムズ、ダンセイニあたりはぜひ読みたいが、いつになることやら。
2011/06/12
感想・レビューをもっと見る