<ヴィジュアル版> 百鬼夜行絵巻の謎 (集英社新書)
<ヴィジュアル版> 百鬼夜行絵巻の謎 (集英社新書) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
どうしてこんな陳腐なタイトルにしたのだろうかと思う。著者の小松和彦は、この分野および妖怪研究の第一人者であり、民俗学の最前線で活躍している人。また本書の内容も、一般向けに分かりやすく書かれているとはいえ、百鬼夜行絵巻に関する従来の通説の根底からの見直しを迫るものだ。しかも、現在所在の明らかになっている60種以上に及ぶ百鬼夜行絵巻のすべてをデータベース化することで、詳細な検討を行っている。その核になっているのが、最近になって日文研が入手した絵図だ。それにしても、この分野でも何点もが海外に流出していたとは。
2013/07/23
tamami
『百鬼夜行絵巻』という絵巻物の存在、正式な名称を本書で初めて知りました。初読の感想は、日本にはこんなに面白いものがまだまだあるんだ、というものでした。本書刊行の目的は、著者によれば現在数十種類?は伝世している絵巻の伝本、異本の系統の整理だそうですが、何、細かなことは研究者に任せておいて、まずは総カラーで描かれた百鬼夜行の姿を楽しむことかと。『鳥獣人物戯画』また『稲生物怪録』、近くは水木しげるの漫画や宮崎駿の『平成狸合戦』に出てくるような妖怪変化の類いが、日本文化の遺産の一つとしてあることを素直に喜びたい。
2022/09/24
テツ
深夜に徘徊する鬼や妖怪の群れ。百鬼夜行。残された数々の百鬼夜行絵巻をカラーで収録しつつ懇切丁寧な説明もしてくれている全国千二百万人の百鬼夜行ファン(いるのか?)垂涎の一冊。夜道で行き合えば生命を奪われると当時は説明されていた彼らも絵にしてしまえばシンプルな鬼や動物が化けた妖怪、器物が変じた付喪神まで多種多様な存在が入り混じり邪悪で怖しいという感じはしない。こうして文字や絵で記された瞬間に怪異からは大なり小なり異なれど神秘は削られてしまうんだろうな。もう今は絶滅してしまった百鬼夜行。在りし日の姿を眺めよう。
2020/03/07
ゆきこ
様々な百鬼夜行絵巻をカラーで、しかも新書で楽しめるという、とても贅沢な一冊でした。まるで博物館に行って小松先生の解説を聞きながら絵巻を鑑賞しているような、そんな気分になりました。日文研本の黒雲シーンが謎めいていて特に印象に残りました。今後新たな絵巻の発見によりさらに研究が進むことを期待します。
2018/04/10
Kikuyo
新発見の「百鬼ノ図」をはじめすべての百鬼夜行絵巻を掲載、ハンディサイズでコンパクトにまとまってます。絵巻の成立から謎解きまで。黒雲渦巻く怪しい魔物や、角のある動物に乗る異形のもの、どこかコミカルで可愛い(?)妖怪たち。その可愛さは鳥獣戯画にも通ずるところがあって味わいがあります。
2022/06/30
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