実存と構造 (集英社新書)
実存と構造 (集英社新書) / 感想・レビュー
シッダ@涅槃
ずいぶんといかめしく堅牢な感じのするタイトル。「実存」と「構造」という長年手につかなかった言葉について知りたくて読んだ。始めの方の「実存」についての説明はハマりこんで読んだが、構造についての説明はやや突飛な印象。ただ「実存」と「構造」は対立概念というより「コインの裏表」という主張や「実存的苦悩は枠組み(構造)の一部である」と認識し、相対化されることで救われる可能性があるという言葉も、目を瞠るものがあり、面白かった。
2016/06/28
佐島楓
実存を構造で包み込み、「悩んでいるのは自分ひとりではない」と教えてくれるのだという言葉が繰り返される。コンパクトにまとまっていて読みやすい。そういえばガルシア=マルケスも中上建次も未読だった。
2011/10/04
Bartleby
ひとりの人間は自由で主体的な存在である(実存の側面)、それと同時に個人は大勢の中のひとりでしかなく、ときにわずらわしい制度や社会もその構造にはなんらかの意味がある(構造の側面)。実存と構造は表裏一体。作者の言うように、実存としての自分が直面している不条理を構造の面から自分一人に限ったことでないと相対化することにより救われることは確かにあると思う。でも、社会の中で自分の存在がちっぽけで無力なものであると思えるとき、その人のプライドをぎりぎりのところで守れるのはやっぱり実存の面なのだという気もしました。
2011/12/25
ともすけ
タイトルからはわかりづらいだろうが、結論としては要するに中上健次と大江健三郎の話である。三田誠広の本は2冊目だが同じ内容の繰り返しであったので彼の本は1冊読むだけで十分であろう。実存と構造からこの世界を読み解こうという趣旨には賛同する部分もあるのだが、それはすでに終わって世界は新しいステージに立っているのだと個人的には感じている。つまりもう時代遅れになっているといった感は否めない。あと、2冊目ということで著者の文章の平易さも気にかかってきたということも付け加えておきたい。内容は正直薄い。
2016/02/24
よし
難しく、取っつきにくいテーマだったが、思いの他、示唆に富んだ文学論、人生論だった。「人生には指針が必要なのだ。生きづらい時代にも関わらず・・。」「実存という概念は人間を袋小路に追い込むことになる。・・そこからいかに脱出し、前向きに生きることができるか。一つの答えが「構造化」である。自分がかかえている問題を、神秘的な繰り返しの構造の中に埋め込んでしまえば、悩んでいるのは自分一人ではないということが自覚される。」
2015/10/11
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