書物の達人 丸谷才一 (集英社新書)
書物の達人 丸谷才一 (集英社新書) / 感想・レビュー
あきあかね
小説家、エッセイスト、批評家、書評家、文学研究家など多様な顔を持つ丸谷才一。本書は、2011年の没後に世田谷文学館で行われた連続講演をまとめている。 文学と社会とを結びつける書評文化を日本に根付かせた意義を語る湯川豊、丸谷作品の内にある兵隊体験の記憶に着目した川本三郎など、六人とも違った切り口で丸谷作品の魅力に迫る。 瀟洒で上品なユーモアのある、工芸細工のような仕掛けにあふれた作品の数々。それらの背後には、自由な意思を失わせる権力や権威、その最たるものとしての戦争への抵抗が、決して声高にではなく⇒
2019/12/13
KAZOO
丸谷才一さんに関する講演集を本に収めたものです。丸谷さんの作品についてはもちろんのこと人となりについてもなまの丸谷さんの生きざまについても面白く感じることができました。このような本を読むともう一度再読しようと思う本が増えて困ります。
2014/09/07
トンボ玉
丸谷才一と交流のあった人達の講演を本にしたもの。それぞれが読み応えがあり面白かったです。意外と言っては失礼ですが、岡野弘彦が一番面白かったし、丸谷を偲んでいる気持ちが見えて本当に良かった。そして、岡野が折口信夫の生徒であり、國學院を卒業してから内弟子のような形で同居しその死を看取ったと書いてあり驚きました。丸谷の著作は膨大ですから時間はかかりますが、いずれ折口も読んでもう少し日本文学に対する見晴らしを良くしたいので、この話は興味深いものでした。
2014/08/09
みつ
氏の没後1年を経ずして行われた連続講演会の記録。小説(戦争との関係、およびモダニズムの文脈で)、書評、和歌と連句、忠臣蔵論と、氏の遺した多彩な文業に光を当てる。ただ、あと二つ、重要なものに詳しく触れられていないのが残念。ひとつは日本語関連(特に「文章読本」は、類書中最高傑作では?)、もうひとつは「男性対女性」を始めとする軽妙洒脱なエッセイ(「雑文」とも。)。思えば、12巻の「全集」でもこの2つのジャンルの扱いは不当に軽い気がする。管見では氏の作品中最も魅力的なこの分野が、今後忘れ去られないかちょっと心配。
2020/12/19
猿田康二
小説家、書評家、エッセイスト、翻訳家、ジャーナリスト、編集者、そして挨拶の名人とあらゆる顔を持つ丸谷氏へ、彼の各分野別の後継者達が追悼文を綴ったのが本書。各章ごと丸谷氏の色んな顔がわかり、日本文学界の巨星を亡くした喪失感が蘇る。特に出色なのが鹿島茂氏の章で、丸谷氏の生き方を「官能に不寛容な軍国主義や国家権力に作品・行動・批評で抵抗した反骨の人」と評している。そして「新しいものなどなく古いものを並び替えて作品とするモダニズム文学を目指した人」と、論じている。丸谷氏はどんな人だったかがわかる珠玉の一冊である。
2018/07/31
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