悪の力 (集英社新書)
悪の力 (集英社新書) / 感想・レビュー
kaoru
「悪とはなにか」という問題は大き過ぎてなかなか語りつくせない。著者は近年の未成年者による殺人事件や文学に登場する悪について分析。資本主義がもたらす悪、組織悪についても筆を進める。個人的に、悪は人間性に胚胎するもので(生まれつき悪の部分の大きい人と少ない人は存在すると思うが)道徳心等で抑制されているものの噴出する機会を伺っているように思える。あるいは人のエゴと悪は切り離せないのかもしれない。そうでなければ犯罪が世に満ちていることを説明できない。また合法的なかたちで悪が行われることもたびたびあるだろう。
2024/09/04
みゃーこ
悪には身体性が欠如しているという。生きている実感が根本的になく空虚が漂う。「エゴイズムとは果てしない虚無、悪はそこに侵入して宿る。」ある種核心を突く洞察だと思う。絶望と虚無にとらわれた時人は死への破壊衝動に駆られるのであろうか。悪の主人公は常に自我の地獄にいる。身体を物質と見る。あらゆる制約から自由になろうとする願望が結果的に悪をなす。欠損してることいわば悪とは病である。悪に魅了される部分を我々誰もが持っているのだが悪の本質は想像力のなさであり陳腐である。人間の本能である「死の衝動」が戦争を引き起こす。
2017/01/28
けんとまん1007
改めて考えてみたことのないのが「悪」ということについて。自分自身の中にも、いろんな面があって、そういう部分もあると認識している。それでも、どこかで歯止めがかかって、そして、暮らしを営んでいる。メデイアを通じて、また、日々の暮らしの中でも、こんなのは許せないと思うことも多い。多くなってきているのかとすら思う。それは、どこからきているのだろう?そんなことを考えた。それでも、明日はやってくる。希望を、夢を持ち続ける。
2016/04/20
みやけん
★★☆☆☆作者の姜尚中とタイトルに惹かれました。漱石の研究をしていたところが出てきます。息子を失ったことや大学の学長を辞めたことは全く知らなかった。説明のつかないものを説明しようという心理的な動機付けとして「悪」ほど重宝なものはない。帯はちょっと煽りすぎかな?
2018/03/05
多分、いのっち。
P.177 悪とは、結局、何なのでしょうか。悪とは、一言で言うと病なのです。もう少し言うと、悪は、「空っぽ」の心に宿る病気です。P.180 悪が魅力的なのは、それを宿した人間が、ひたすら自分だけを信じる、確固とした自信にあふれているように見えるからです。ですが、「自分だけしか信じられない」は、やがて「何も信じられない」へと変わっていかざるをえません。なぜなら、人との繋がりを欠いた全能感は、破綻する運命にあるからです。聖書も、文学作品の多くも、そうした悪にとり憑かれた主人公たちの破綻を描いています。
2016/04/02
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