英米文学者と読む『約束のネバーランド』 (集英社新書)
英米文学者と読む『約束のネバーランド』 (集英社新書) / 感想・レビュー
パトラッシュ
漫画『約束のネバーランド』は面白く読んだが、現実と非現実世界が交錯する『デスノート』の系譜を継ぐディストピア物と思っていた。しかし意外なところで『ピーター・パン』や『アリス』など著名ファンタジーとの関係があったり、ユダヤ・キリスト教の知識を基礎にしているとの指摘には思わず頷いた。何よりジャンプ連載作品ながら女の子が反抗と解放を主導する設定に、男らしさ女らしさの呪縛を脱するというジェンダー視点の位置付けは思いもよらなかった。日本における最新の世界文学の潮流を踏まえた作品は、文学ではなく漫画で生まれたようだ。
2021/03/18
Nobuko Hashimoto
あまりに一気に読んでしまって感想を記してなかった! 『少年ジャンプ』に連載していた長編マンガを英文学者が読み解く本。著名な文学作品や、ユダヤ教、キリスト教のこれこれをなぞっているのでは、という具合に解き明かしていく。おおおお~なるほど~!と感心しまくり(マンガの作者がそのつもりだったかは別として)。歴史や宗教、文化の蓄積を知ることで、架空の作品がより深く読めるようになる楽しさを体験させてくれる。『約ネバ』を読んでいない人でも楽しめると思います。読んだ人はぜひ! 結末のネタバレはないので安心して読めます。
2020/08/21
はやしま
『鬼滅の刃』が大人気だが、私は同時期に連載されていた『約束のネバーランド』も楽しみに連載を読んでいた(寧ろ『約ネバ』の方が好きだった。)。本作はその「沼」にハマった若手研究者が自身の専門をベースに読み解いたもの。平易な言葉でわかりやすく一般向けに書かれた良書。「イギリス文学・文化とのつながり」「原書信仰とユダヤ・キリスト教」「ジェンダー」の3つのポイントから分析し、『ピーター・パン』『アリス』シリーズや英国の階級制度との類似点、ユダヤ教やキリスト教的暗喩を指摘しているが、特に「ジェンダー」の論考が秀逸。→
2021/01/03
りー
先日完結した漫画「約束のネバーランド」を、物語の祖形から読み解いていく本。著書自身がこの漫画の沼にはまったそうで、愛を感じられて嬉しい。ピーター・パンとピーター・ラートリー、英国文化、ユダヤ教やキリスト教との共通点、ジェンダーから見た主人公たちなど、興味深い指摘がたくさんありました。物語には神話や歴史、古典文学などのイメージ祖形が自ずと存在します。意図して選んだもの、必然的に引き寄せられたもの。どちらにしても、この漫画の素晴らしさは、それらを越えていこうとする前向きな強い意思を感じた所だったと思います。
2020/10/29
大先生
約束のネバーランドを読んだことのある人にオススメの一冊。「ピーターパン」、「不思議の国のアリス」、「指輪物語」、ユダヤ教、キリスト教、ジェンダー等の視点から分析した考察本です。著者によれば、「約束のネバーランド」は、「大人の古い常識を覆し、真に自由な大人へと成長する子供達の物語という伝統的な児童文学の王道を継承しつつ、二十一世紀的な新しいジェンダー観を反映し、漫画という媒体で描かれた、まさに新しい『文学』」だとのこと。素晴らしい考察だと思いました。
2021/06/21
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