中国共産党帝国とウイグル (集英社新書)
中国共産党帝国とウイグル (集英社新書) / 感想・レビュー
trazom
中国への批判が激しいが、私はどこかでこの国を擁護しようとしていた気がする。皇帝を戴く帝国であり続け中華思想が染みついた三千年の歴史からすれば、現在の中国の振舞いは必然ではないのか。むしろ、人権とか法の支配とか、つい最近にできた概念を押し付ける西欧こそ如何わしいのではと。だが、両先生は、中国共産党の支配は、中国の伝統とも共産主義とも無縁の覇道であると厳しく糾弾する。特に習政権のウルトラ・ナショナリズムは、民族主義と中国的普遍主義のキメラだと。儒教的な善き伝統と共産党を切り離して考えるべきだと教えられる。
2022/01/10
とくけんちょ
新疆ウイグル自治区に対する中国の同化政策だけでなく、他の同化政策、イスラムを含め、アメリカとの関係性を整理することができた。1番は、現在の中国の立ち位置や方向性をしっかりと分析していたので、これは価値があった。それを受けて、日本は何を優先させ、誰とともに歩むのか。日本の安全保障を考えると難しい問題だ。考えさせられるいい本だった。
2021/10/18
Katsuto Yoshinaga
ソ連の解体に恐怖し、中国は三つの自治区への警戒を強めた。この警戒からの締付けを、「(生存権がかかっているイスラエルとパレスチナの問題と違い)新疆ウイグルの問題は中国が巨大な権力を使って、ローカルなコミュニティであるウイグル人をいじめている。(中略)正当化の余地が無い」と批判し、「儒学を基本にし、中央集権的官僚制国家で、多民族で、漢民族中心で、ナショナリズムではない伝統中国」とも、多民族・多言語・多宗教・多文化を包括する本来の帝国の在り方とも異なると、両名は分析している。(コメに続く)
2021/11/26
Francis
猫町俱楽部の長編読書会の事前レクチャーを務められた橋爪先生がウイグル問題を語るのであれば買わないわけにはいかくまい。橋爪先生は実にウイグル問題を深く理解されている。中国語も学ばれて奥様も中国人であり、中国の事も深く理解されていることも良かった。私も習近平主席の「薄っぺらさ」に不気味なものを感じていたのだが、その正体が一層クリアになったと思う。一方で中田氏は何だか歯切れが悪い。あとがきで自説を展開してるけど何だか負け惜しみ、言い訳っぽく感じるんですよね。日本の親イスラム的知識人にはありがちだけど。
2021/11/14
風に吹かれて
ウイグルはイスラーム、なのに、なぜイスラーム世界は中国共産党のウイグル弾圧に声を上げないのか、と橋爪氏は問う。イスラーム学者の中田氏の話は歯切れが悪いように感じた。イスラーム世界を深く知っているが故、ということなのだろう。 アメリカのイスラーム世界への対応なども影響し中国とアメリカを見ているイスラーム世界。イスラエルのパレスチナへの行いを容認しているアメリカがウイグル問題に口を出しても中国が聞く耳を持たないのは当たり前だと思う。→
2021/11/08
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