今ひとたびの、和泉式部 (集英社文庫)
今ひとたびの、和泉式部 (集英社文庫) / 感想・レビュー
万葉語り
「あらざらむこの世のほかの想い出に今ひとたびの逢ふこともがな」情熱的な恋の歌人和泉式部の真実を、赤染衛門の娘が追うミステリー仕立ての歴史物語。中西進の解説もステキ。道長は平安時代の流れを作った豪傑だけれど、いろんな人の気持ちも踏みにじって天下を取った。けれども和泉式部から歌だけは取り上げられなかった。自分が信ずるものを持ちたいと思う。2021-089
2021/07/24
ピロ麻呂
「恋多き女」「平安の小悪魔ちゃん」和泉式部の男性遍歴を描いた物語。2人の子持ちなのに、夫が単身赴任中に若いイケメンプリンスと不倫。彼が亡くなると今度は弟くんに手を出す。しかも、奥さんが住む自宅に転がり込んで同居。弟くんも亡くなると、「何故私の愛した人が次々と死んでいくの~?」と嘆き、仏教にハマり出す。すると、仏教教室のイケメン僧侶と恋に落ちる。坊主まで煩悩の塊にしてしまうとは…その恋はさすがにダメだと引き離されて、道長の勧めで金持ちのオジサマと再婚。以上、超肉食系女子の和泉式部ちゃんでした。
2020/01/13
紅香@本購入まであと9冊
この物語は和泉式部の死後という不思議な時系列から始まる。読み進めていくうちに恋や死の真相を知りたい、好奇心を駆り立てる。婚姻も離縁も、生も死も、すべて時の権力者の掌握の中。いつだって勝者の歴史。取るに足らぬ者は悪名を背負って葬られていた。浮かれ女と呼ばれていた和泉式部を公平な目線で取り上げた作品だと思う。『冥きより 冥き道にぞ入りぬべき 遥かに照らせ 山の端の月』彼女の歌はとても繊細で思わず唇にのせて奏でたくなる。千年の時の流れを、よくぞここまで辿り着いたと愛おしくなる。彼女こそ女性の行く末を照らす月。
2022/09/03
との@恥をかいて気分すっきり。
東京生まれの私が大阪岸和田に来て、かれこれ30年近くになる。ここには和泉式部に由来する石碑や地名などがあちこちにあることは気づいていた。街を歩けば1000余年を超えて古墳時代から現代に至るあらゆる遺跡や街道、古の記しが転がっている。にも関わらず日々の暮らしに追われ、和泉式部の詠んだ歌ひとつ知らずに今に至っていた。この小説を読んで、あの時代にあってこれほどまでに愛と女性の解放を焦がれ、情熱をもって生き抜いた人がいたのかと驚嘆するしかない。
2019/09/06
のびすけ
恋と歌に彩られた和泉式部の物語。赤染衛門の娘・江侍従の視点と和泉式部の視点、時間軸が異なる二つの視点で物語は進み、終盤はミステリー風の展開。結末には少しモヤっとしたけど、辛く悲しいことの方が多かった恋の遍歴とその心情を歌った歌の数々がとても印象的でした。
2024/09/27
感想・レビューをもっと見る