腐れ梅 (集英社文庫)
腐れ梅 (集英社文庫) / 感想・レビュー
ぶち
この小説の設定が面白いのです。似非巫女で色を売る綾児(あやこ)と阿鳥(あとり)が、銭儲けのために菅原道真公を祀ることを企てるというもの。これが全国1万2千の天満宮・天神社の総本社である北野天満宮の事なのですから、面白くないわけがありません。作者がピカレスク小説を意図したあるように、最下層で生きる二人の女の悪者振りが半端なく、この小説をより一層面白くしています。タイトルの"腐れ梅"の意味が分かってくると、天神さんの梅を見る目も違ってきてしまいそうです。
2021/07/14
ちゃとら
出だしは、ほとがかゆい・・・何???菅原道真が得意の澤田瞳子さん。色を売っていた似非巫女の2人が北野天満宮を開く頑張りのお仕事小説と思いきや、どろどろ。これって天神様からのクレームはなかったの⁈と心配になる程の内容だった。色と欲と嫉妬と利権???どろどろに渦巻き🌀道真様を祀る北野天満宮に向かっていく。怨霊の話も、こうして作られた物だったか⁈研究者になりたかった澤田瞳子さんが調べた上で描いた、かなりショッキングな話。不謹慎だが面白かった👍
2023/10/27
エドワード
北野天満宮の北端に文子天満宮という祠がある。縁起によると菅原道真の霊は、最初多治比文子に憑いたとある。澤田瞳子さんは、この由来から、似非巫女の綾児という自由奔放な女性が混沌とした平安京を生きる冒険物語を創り出す。道真を祀って一攫千金を企む、巫女仲間の阿鳥、菅原道真の孫の文時、怪僧・最鎮らにまきこまれた綾児は、その才覚で計画の中心となって動き出す。権門勢家だけでなく新興勢力の大名田堵を後援者に立てる綾児の世相を見る目が光る。律令制から荘園制へ移る平安時代の的確な描写、現代語を生き生きと話す綾児が魅力的だ。
2020/11/17
びぃごろ
菅原道真を祀る北野天神がいかにして造られたのか。まさか市井の色を売る似非巫女二人が切っ掛けとは!阿鳥に誘われた綾児だが、この二人仲が悪い。早々に対立するものの道真の孫文時と学僧最鎮が加わり、本格的に事が動き出す…ただ担ぎ出されただけでは終わらず、自分のものにせんとする綾児が凄まじい。最後まで(笑)
2020/12/09
マサキチ黒
どう見ても官能小説としか思えないタイトル&表紙カバーだが澤田瞳子氏ならそれも良いか、と購入して長い事積んでいた本書。予想以上に目茶苦茶おもしろい。残念ながら初めての官能小説体験にはならなかったが、平家勃興前の平安末期、似非巫女の主人公のピカレスク・ロマンがここまで盛り上がるのは澤田瞳子氏のぶ厚い人物造形からの行動原理のぶつかり合いが見事ゆえか。一行目からこれだもの。
2024/04/26
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