流亡記/歩く影たち (集英社文庫)
流亡記/歩く影たち (集英社文庫) / 感想・レビュー
流石全次郎
淡々と描写は続く。起承転結は必要ない。何かを訴えてくる。読むのに1ヵ月かかってしましまいました。読んでも、読んでもページはすすまない。1ページ毎の密度が高いからか、歳をとって読解力が衰えてるせいか。それとも令和の本が読み易くなっているからなのか。洗面器の唄、戦場の博物誌。なかかなか読みすすめられなくても何かを貰った気がする読後感でした。
2022/01/19
hirayama46
中編「流亡記」は「パニック」や「裸の王様」に近い時期の1959年、短編集『歩く影たち』は1979年の刊行だったようなのでだいぶ離れていますが、濃密な描写を積み重ねる文章はそこまで遠い印象はないですね。もちろん「流亡記」のほうが若いころの作品らしく、呼吸を入れないような執拗さがありましたが。
2022/12/30
オサム
若い頃から何度か読んできた作品ばかりだが、この齢になるとまた感じ方が違う。嘗ては、女性は横を通り過ぎるだけで妊娠しちゃうんじゃないかと思えたほどの開高氏のエネルギッシュさに圧倒されていた。今は、氏の深い洞察力と、人間が好きで堪らないのに、それ故に感じてしまう哀しさが伝わってくる。なんて感受性豊かな人だったんだろう。
2021/09/09
ぼっせぃー
「流亡記」「フロリダに帰る」「岸辺の祭り」「貝塚をつくる」「玉、砕ける」「怪物と爪楊枝」「洗面器の唄」。「悲愁、痛惨、何を目撃しようが彼はついにこの国では第三者でしかない。帰りの航空券をポケットに入れている男に、ここに生れ、住み、死んでいくしか ない人が、どう触れられよう。《わかる》と口にだした瞬間にどれほどのものが指のあいだから洩れおちていくことか」。開高健が切り取る風景は匂い立つ。兵士であったオブライエンとは異なった視線、“隔てられた”視線で見渡された国は、ニョクマムの様に味覚と嗅覚へ抽出されている。
2021/02/19
感想・レビューをもっと見る