波の上のキネマ (集英社文庫)
波の上のキネマ (集英社文庫) / 感想・レビュー
里愛乍
映画館で観る映画が好きだ。話題作をシネコンで観るのもいいけど、お気に入りの映画館でふらりと立ち寄って出会うのもいい。柄本のじいさんが語る世代を微ながら覚えているからだろうか、懐かしさに込み上げてくるものがある。だけど本作はそんなノスタルジーに浸ってるだけではすまなかった。こんな過酷な労働?があろうかと凄まじさに息を呑むばかりである。そんな人間の感覚すら失う毎日に感情を取り戻してくれたのは音楽であり映画だった。人間の生活に何が大切か、切り離してはいけないか、このご時世に改めて考えさせてくれたと思う。
2023/01/08
トラキチ
再読。増山さんの作品は歴史を追体験出来ます。本作では閉館を決めている尼崎の単館系の映画館のオーナーが、あるきっかけから映画館をオープンさせた祖父のことを遡ります。そこで一筋縄でない祖父の経験を知ることとなりますが、読者も然りですね。舞台は西表島、石炭発掘のために過酷な強制労働が描かれます。作中の言葉を借りれば、多くの人が日本の近代化の犠牲となります。参考文献も多く、実話を元にして作られてるので感慨深さはより深いです。それと、各章映画のタイトル名がつけられていて、作者の映画に対する造詣深さが伺い知れます。
2023/07/17
Walhalla
尼崎市の立花にある小さな映画館をめぐって物語が始まります。フィルムを映写する方式だったものがデジタル化され、設備費を工面できない個人経営の多くの映画館が廃業に追い込まれていきます。序盤はそんなストーリーでしたが、中盤に差し掛かるあたりから、舞台は戦前の西表炭鉱へとガラッと移りますので、ちょっと驚きですね。祖父が映画館をはじめたのは、日本の近代化の犠牲とも言える、この過酷な炭鉱での生活が一つのきっかけになっていたようで、とても感慨深いです。増山実さんの作品内で描かれる史実は、勉強になります。
2024/07/09
JUN
友人にもらった本。西表島の炭鉱の話。実際に、こんな悲惨で過酷な牢獄のような場所があったんだろうな。
2023/02/10
野比玉子
壮大な物語だった。西表島に日本有数の炭鉱がありその中に映画館があった事など全く知らなかった。映画と炭鉱がどのように繋がっていくのか話を辿っていく中で、忘れてはいけない事実があり、それを基にしてこの小説が生まれた。映画は炭鉱の中で働く坑夫たちの一筋の光であったことがひしひしと伝わってきた。尼崎の映画館と炭鉱の中の映画館が繋がった時に感動で心揺さぶられて言葉にできない。
2021/09/24
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