百万のマルコ (集英社文庫)
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百万のマルコ (集英社文庫) / 感想・レビュー
のぶ
柳さんはこんな作風の話も書くのかという異色作に感じた。13世紀末ジェノヴァの牢に繋がれたマルコ・ポーロが、同房の囚人達に語る冒険話を集めた14の短編集。あたかもアラビアン・ナイトのように。その語られる物語は、ホラ話でその内容は面白かったり、そうでなかったり多様に感じた。その語りはいつもオチのついていないところで終わるので、同房の囚人達が話のオチはどこなのかを探す羽目になる。短篇ながら伏線が張られていて、オチは推理小説の謎解きというよりは、とんち話に近い。そんな内容だが、自分には向いていなかったようだ。
2022/04/06
ひろし
幻想冒険譚と謎解きの合わさった短編集。時は中世、欧州からはるばるモンゴル帝国に渡りフビライ・ハーンに仕えたマルコ・ポーロが広大な帝国の各所で見聞きした事物を、同じく今は囚われの身となった仲間に自慢話として語る。毎回話のハイライトに関する謎が出題され、仲間たちは謎解きで盛り上がり、その間つかの間の解放感を感じる。いったいどこまでが本当なのか、幻想的な異国話の語りの面白さと、謎解きの楽しさと両方が味わえる。マルコ・ポーロはきっとホラ吹き野郎だったのだろうと思えて、東方見聞録をそういう目で読んでみたくなった。
2022/05/09
saga
「百万の」とはホラ吹きのこと。ジェノヴァの牢に囚われたヴェネチアのマルコ・ポーロと、物語作者ルスティケロとの出会いにより邦題『東方見聞録』が著された史実を基にした物語。ホラ吹きマルコという別名を持つことを知って本書を入手した。各話は、事実と虚構が入り混じった世界で、持ち前の機知、頓智によって切り抜けるもの。それは世界各地に伝わる落とし噺の集大成と言えなくもない。「四面楚歌」や大岡裁きのように、中国の故事に出典を求められるものも多そうだが、マルコの創作力とルスティケロの編集力が抜群だったのだと思えた。
2022/05/19
えみ
これは主人公をマルコ・ポーロに変えた一休さん。途轍もない財宝「とんち」が詰まっている宝箱をマルコ・ポーロが牢の中に運びこむ!この財宝によって戦争捕虜として囚われていた牢の囚人達に希望と輝きの時間が与えられたのだ。なんて軽快、思わず唸ってしまう奇妙な冒険と不可解なミステリの短編集。13世紀末、大ハーン・フビライに仕え彼の命により使者として様々な国を回ったというマルコ。同じ囚われの身、暇を持て余す囚人達にマルコはこれまでの冒険とミステリを語り始める。謎解きゲームは「真相」を集めた先にある。救いのとんちに拍手!
2024/01/27
レミニサンス
百万のマルコ、ホラ吹きのマルコが語った謎は牢屋に入れられた他の4人から退屈しのぎとなり、そして最後には牢屋から出るきっかけとなる。短編集なので続けて読むと、なるほど!と膝を打つ事間違いなし。少し難しく思える文章だけど、じっくりと、しかし時間はかかっても一気に読むと中学生高校生でも楽しめる作品。無理に続けて読まなくても良いですが、一気に読むとなお面白いかな?私は2時間かかって読みましたが、読んだ後の余韻がなんともいえず良かったです。
2022/10/23
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